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第七章 ヒューリ城 1 捕らわれの楽夜

「ここよ。」


 クロムがそう言い、立ち止まった。そこは、守護部屋と同じ、石畳の床と、石造の壁でできた部屋だった。が、守護部屋と全てがそっくりそのまま同じ訳では無い。こっちの部屋の方が、広く、天井も高く、部屋の形も、守護部屋のような四角形ではなく、円形になっている。


「で、訓練って言ったって、誰と戦うんだ? もうクロムとは敵対していないし、訓練で全力でかかってこいと言われても、その気にはなれないぞ?」


 俺がそう言うと、クロムは、少し考えた後、


「分かったわ。それじゃあ、あなたの戦闘履歴から魔物を選んで、その魔物と戦ってもらうわ。ステータスを開いて。」


 と言った。俺は、言われるがままに、ステータスを開く。と、クロムが、強い光を放つ鍵のようなものを取り出す。そして、レベルの下に空いている空白の部分に、その鍵を差し込み、右に鍵を回す。と、そこに、俺の戦闘履歴が表示される。その戦闘履歴をクロムがじっと見つめ、じっくりと考え、弄くり始めた。

 そして、五分後。


「楽夜、準備ができたわ。今回、楽夜に戦ってもらうのは、今、世界中で勢力を強めている種族、ジュリアナの末裔、ジュリンよ。準備は良いかしら?」


 とクロムが訊いてきた。それを聞いた俺は、自分が少し嫌そうな表情を浮かべているのを自覚した。何せ、俺達を一度は全滅させかけ、エミルや俺達を散々いたぶった敵だ。戦いたくないはずがない。

 だが、これも、己を強くするために必要な戦いなのだと自分に言い聞かせて、


「ああ。準備は良いぞ。」


 とクロムに合図を送る。すると、徐々に、ジュリンの体が形作られ、そして、俺の前に、因縁の相手と言っても良いであろう相手、ジュリンが出現した。


「あら、久しぶりね。前に戦ってから、1ヶ月くらいしか経っていないのに、内に秘めた戦闘能力は、前とは比べ物にならないくらいに上がっているようね。それで、私を呼び出したって事は、私と戦いたいのかしら?」


 召喚されたというのに、少しも戸惑っていない様子のジュリンに、そう問いかけられた。


「ああ、そうだ。ジュリンなら見て分かるかも知れないが、俺は、前に戦った時よりも、格段に強くなっている。お前も、遠慮せずにかかってこい!」


 俺は、そう返し、刀を抜く。


「そう。じゃあ、私も、真の姿を見せてあげるわ! 『樹精霊体化』!」


 そうジュリンが唱えると、ジュリンを、ホタルのようなものが取り巻き始める。と、そのホタルのようなものは、ジュリンに吸収されていき、その一方で、ジュリンは、体高が高くなり、精霊の気配を纏わせている。見た目に大きな変化は無いが、中に秘められたエネルギー量や放たれる覇気などは、前回戦った時よりも、多く、より強くなっているのが感じられた。


「これで準備は整ったわ。さあ、始めましょう!」


 そうジュリンが宣言した事により、因縁の相手との対決が始まるのだった。

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