表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/111

第六章 襲撃者達 4 作戦会議

 エミルは、クロム達が去って行った後、すぐに、仲間達を集めた。そして、


「今から、作戦会議を始めるわ!」


 と宣言した。

 まず、口を開いたのは、ジョンだ。


「で、作戦会議って言っても何を話し合うんだ?」


 という質問をした。この質問に対し、エミルが説明を始める。


「それじゃあ、事情を伝えるわね。三時間くらい前、敵襲があったの。襲撃者は、13、14歳程の少女、クロムと、10歳くらいの少女、クロームの二人。その二人は、私と楽夜に比べても、決して劣らないどころか、むしろ、相手の方が、若干力が上だったような気もするわ。それで、戦った結果、私は、耐えきって、何とかここに残る事が出来たけれど、楽夜は、不意討ちをくらって倒れて、クロム達が去って行く時に、連れていかれてしまったの。それで、今から、楽夜を連れ戻す為の話し合いをしようと思うの。」

「なるほど。それで、どこに楽夜がいるのかっていうのは、分かっているのか?」

「ええ、確か、クロム達は、ヒューリ城で待ってるって言っていたわ。」


 エミルがそう言うと、仲間達の中で、ざわめきが起こる。


「ヒューリ城だと!?」

「嘘……」

「マジかよ……」


 等々。

 そして、全員を代表して、オリクが意見を述べる。


「いくら楽夜を助けたいからって、考え無しにヒューリ城に突っ込むのは危険。それどころか、しっかりと作戦を立てていても、行動次第で、全滅のリスクはぐんと高まる。好機を見て行動した方が良い。」


 これに対して、エミルが反論する。


「駄目よ。楽夜が、いつ、何をされるか分からないじゃない! 好機を待って、その間に楽夜が殺されちゃったら、元も子もないじゃない!」


 と声を荒げてオリクに反論したエミルだったが、それに対して、ジョンが冷静に意見を述べる。


「エミル、だが、だからといって、考え無しに突っ込んで行って、俺達までやられてしまったら、それはそれで、元も子もないだろ? それに、楽夜だって、エミルや俺達が死んでしまったら、悲しんでしまうだろ?」


 そう言われたエミルは、ハッとする。自分が死んでしまっては、エリュン以外には、どうする事も出来ないのだ。エリュンのおかげで生き返れるとは言え、それは、何度でも無駄死にして良いという訳ではない。それに、万が一、オリク達を死に晒してしまえば、もう、オリク達は、生き返る事が出来ないのだ。それこそ、楽夜を悲しませる、一番の原因になりかねない。そうエミルは気づいたのだ。


「そう、ね。楽夜を悲しませたくは無いし、今は、作戦を立て、好機を窺うだけにしましょう。」


 そうエミルは言った。それを聞いたジョンが、話を前へと進める。


「で、今は、どうやって、楽夜をヒューリ城から救出するか、それが問題だろ? エミルとしては、何か作戦はあるのか?」


 そうジョンが、エミルを問う。その問いに対して、エミルは、


「う~ん、私は、この世界の地理には疎いから、特に作戦とかは無いわね。攻め方なんかは、ジョン達にお任せするわ。ただし、出来るだけ、楽夜にとって負担が無いように解放してあげて。」


 と返す。ジョンは、エミルに向けて頷いた後、オリク達に向けて、話し出す。


「今から、楽夜を救い出す為の、作戦会議を始めるぞ。まず、今分かっている事は、楽夜が、二人の少女に拐われ、今、ヒューリ城に捕らえられているという事だ。それで、楽夜をヒューリ城から救い出す方法を今から考えようと思うんだが、何か、作戦はあるか?」


 そうジョンが訊くと、オリクが真っ先に手を挙げた。


「オリク、何だ?」

「エミルと、その他三人がヒューリ城に向かって、二人の少女を、正面から叩くのをおすすめする。よほどの罠が無い限り、これが一番の安全策になる。」

「なるほど。確かに、一番安全確実ではあるな。他の者で、意見があるやつはいるか?」

「俺から意見があるぜ。」

「何だ、レックス。」

「ジョン、ヒューリ城の裏口から忍び込んで、その二人の少女を不意討ちするってのはどうだ? オリクの方法よりも、こっちの方が、手っ取り早く終わるぜ。」

「確かに、不意討ちに成功した場合は、一瞬で終わらせられるな。だが、失敗したら、かえって、相手の警戒心を高める事に繋がってしまう。その手に出るのなら、慎重に行動しなければな……」


 と、その時。エミルが手を挙げた。


「どうした、エミル?」

「私は、オリクの案に賛成するわ。理由は、まず、レックスの案は、成功率はそこまで高くないはずだし、失敗したときのペナルティーの重さを考えると、割に合わないと思うの。その分、オリクの作戦なら、勝てば、それで終わりでしょ。レックスの不意討ちも、成功すれば、それで終わりだけど、失敗した時に、相手の警戒心を高めてから戦うよりは、相手の警戒心が低い時に戦うのが良いと思ったから、私は、オリクの作戦に賛成するわ。」


 そうエミルが意見を述べた。ジョンは、それを訊くと、


「なるほど。俺としては、エミルの意見に酸性だ。理由としては、エミルと同じく、不意討ちに失敗した時のリスクを考えると、普通に戦った方が、勝率が高いと判断したからだ。他に意見や異論が無いようなら、オリクの作戦で行こうと思うんだが、意見がある者はいるか?」


 そうジョンが訊いたが、誰からも手は挙がらなかった。


「よし、じゃあ、楽夜を助ける作戦は、『真っ向から攻め込む』で行こう。」


 こうして、楽夜を助ける為の作戦が決まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ