第一章 冒険の始まり 3 再戦の時
守護部屋に、猫魔物が入ってきた。それだけで、俺達に緊張が走る。
俺は、事前に、ラドンと作戦会議を行い、万が一に備えて、エミルにも装備を与えていた。しかし、それでも、あの猫魔物に勝てるという保証は無い。
だが、来てしまったからには仕方ない。全力で相手をしよう。
「行くぞ! 『斬り上げる』!」
俺は、そう唱え、猫魔物の体に、下から上に向かって、斬りつける。猫魔物は、反応することができず、攻撃をまともにくらう。しかし、流石は五大魔物の配下というべきか、ひるむ様子が全く無い。
猫魔物は、カウンターとばかりに、腕を振り下ろし、俺を叩き潰そうとする。が、俺は、猫魔物の腕の軌道を正確に見極め、腕を回避する。そして、もといた場所に戻る。
次に仕掛けたのは、ラドンだ。
「やるぞ――! 『ウルトラハンマー』!」
ラドンはそう叫ぶと、ハンマーを頭上で振り回す。そして、そのハンマーを、猫魔物に強く打ちつける。
猫魔物は、胸の前で両腕を組み、ハンマーを防御していた。しかし、猫魔物は、突如、ハンマーを振り払い、ラドンを叩き潰す。
ラドンは、猫魔物の拳から抜け出そうとするが、ここで、ある異変に気づいていた。
(甘い香りがするな……昔、ニャロニードの他の個体と戦ったことがあるが、その時には、こんな香りはしなかったな……そうだとすると、一体この香りは何だ……?)
そう考えていたラドンだが、その香りの本質には気づいていないようだ。
俺は、猫魔物の拳に叩き潰されているラドンを助けようとする。
「ラドンを助けろ! 『分身』、召喚!」
そう唱え、分身を召喚して、ラドンのもとに向かわせる。しかし、猫魔物も、分身を召喚し、俺の分身と戦いを繰り広げる。
このままじゃ、埒が明かない……。そう察した俺は、ラドンのもとへ向かう。
一方、ラドンは、それと同時に、あることに気づく。
(昔手に入れたスキルの書に、『特別香』というスキルがあったな……。そのスキルは、甘い香りを体内から出し、相手を誘惑させるというものだったな……。そういえば、さっきから、体の力がだんだん抜けて来て、クラクラしてきている……まさか!)
そう気づいた時には、もう遅い。ラドンは、どんどん体の力が抜けて、地面に寝転がる。そして、だんだんまぶたが閉じて行く。
(はっ、駄目だ。こんなところでやられてしまったら、楽夜達の役には立てない……)
そう一度は抵抗できたものの、甘い香りを嗅ぎ続けたせいで、再び誘惑されて行く。二度目の抵抗をすることができなかったラドンは、猫魔物の配下に落ちる事となる。