第六章 襲撃者達 3 終戦の時
俺は、エミルが、『悪夢連行』から抜け出せたのをチラリと見て確認した後、クロムを仕留めにかかっていた。
「くらえ! 『神速斬り』!」
クロムも、流石にこの一撃には反応できず、ダメージを負ったようだ。が、クロムは、反撃を仕掛けてきた。
「反撃よ。『ムチの雨』!」
そうクロムが言うと、俺に向けて、幾度にも渡って、大量のムチが襲いかかってくる。
俺は、盾でムチを防ごうとしたが、防げたのは、最初の数回だけで、後のムチは、盾を避けて襲ってきたので、俺は、かなりのダメージをくらってしまった。
「くっ……」
と俺は、呻き声を上げる。が、まだ動けはする。
俺は、クロムから距離を取り、様子見に徹する。と、その時だった。
「『従虫』、解放!」
とクロームが、巨蜘蛛を解き放ったのだ。巨蜘蛛は、真っ直ぐに、エミルの元に向かう。それなら、俺は、しばらくは任せておいても大丈夫か、と考え、クロムを相手取る事に集中するのだった。
・・・・・・・・・
エミルは、クロームと巨蜘蛛を相手している。が、当然、余裕に戦えている訳ではない。ギリギリで戦況維持ができており、少しでも気を緩めると、戦況が逆転してしまうのだ。
そう、今も。
巨蜘蛛の脚から繰り出される攻撃をエミルが避ける。と、いつの間にかエミルに近寄って来たクロームが、エミルの耳元で、
「私達と一緒に来ないと、楽夜もろとも死んじゃうわよ?」
などと囁きかけてくる。それだけならまだ良かったのだが、クロームは、たまに『ライフブレイク』で精神攻撃を仕掛けてきたり、『分身』を大量に召喚して、『誘言』の嵐を仕掛けてきたりと、厄介な事をしてくるのだ。これには、エミルも手を焼いた。しかも、その間にも、巨蜘蛛は攻撃を仕掛けてくるので、面倒くさい事この上無いのだ。
そして、今、戦況が動く。
巨蜘蛛が、エミルに向けて、次々と糸を放つ。エミルは、冷静にその糸を避けていく。が、その時。エミルの足が、何かにくっつき、離れなくなってしまった。
「えっ!?」
エミルは、バランスを崩し、石畳に倒れ込む。そこへ、巨蜘蛛が容赦無く、糸を放っていく。そして、巨蜘蛛の糸がエミルの全身を覆うと、今度は、蜘蛛の糸と石畳とを、新たな蜘蛛の糸で接着していく。そうすると、エミルの体は、地面に接着されてしまい、エミルは、身動きが取れなくなってしまう。そうすれば、後は、クローム達は、エミルに自由に『誘言』をかけたり、自由にちょっかいをかけたりできるのだ。それにより、エミルの精神的ダメージはより高まって行き――
エミルの精神は、限界を迎えつつあった。




