第五章 襲い来る鎧蛇
エミルが、『観察』を始める。エミルが『観察』をしている間、俺達にできる事は、エミルを守る事だ。いくら『ヒールスタンス』で身を守っていても、敵の攻撃を受けてしまったら、集中力が切れて、また一からやり直しになってしまうだろう。それを防ぐ為に、エミルを守る事は必要なのだ。
「ガードン! 俺と二人でエミルを守るぞ!」
「承知致しました!」
俺は、エミルの右斜め前に、ガードンは、エミルの左斜め前に立ち、二人でエミルを守る。
ガードンは、盾で、鎧蛇の噛みつき攻撃を受け流している。やはり、ずっと盾を握っているガードンは、常人の俺とは次元が違う。
俺は、盾での受け流しができないので、鎧蛇の噛みつき攻撃をまともにくらっている。この行動の目的が、鎧蛇の攻撃対象を、俺やガードンに向けさせる事である以上、それでも構わないのだろうが、流石に受けすぎは良くない。早く、鎧蛇のステータスの確認を済ませてくれ――と思いつつ、俺は、また鎧蛇の攻撃を受ける。
俺が、さらに何度か攻撃を受けた、その時。
「楽夜、鎧蛇のステータスを報告するわ。物理攻撃力が約4000、術以外の各種防御力が約5500、術防御力が約100、特殊効果が、各種呪い無効、残りHP2500未満で即死通用よ。」
「鎧蛇の現在HPはいくつだ?」
「えっと、約12000よ。」
「なるほど。エミル、ありがとう。」
さて、と。あと10000ほど鎧蛇のHPを減らせば、俺達の勝利が確定する訳だ。が、術以外の各種防御力が約5500となると、やはり、攻撃のメインは、マジカルによる術になりそうだな。
「マジカル、マジカルにエネルギーにできるだけ無駄が無いように、攻撃をしてくれ!」
「了解!」
マジカルは、最も良い術の組み合わせを考える。
さて、次は、マジカル以外の攻撃ができる者への指示だな。
「じゃあ、今から、俺、エミル、オリク、ジョン、シュートの五人で攻撃をするぞ。まず、最初は、シュートだ。シュートは、マジカルが術を放つのと同時に、鎧蛇に『ロケットシューター』を仕掛けてくれ。その後は、隙を見て、『射ちつける』で攻撃をしてくれ。」
「任せてくれ。」
「さて、次は、俺とエミルだ。俺は、『オーバーブレード』でエネルギーを使いきるから、接触系の攻撃の要は、エミルになる。エミルは、残っているエネルギーを存分に活用して、鎧蛇に大ダメージを与えてくれ。可能なようなら、撃破してしまっても構わない。いいな?」
「私に任せて!」
「最後は、オリクだ。オリクは、エミルが撃破に失敗した場合の、とどめの要員だ。即死効果を持つ、『連射』が使用できる分のエネルギーを残して、その他のエネルギーで、できるだけ鎧蛇のHPを削ってくれ。もう、『連射』しか使えなくなったら、『連射』でとどめを刺してくれ。その際、ジョンも一緒に攻撃してくれ。」
「分かった。」
「任せてくれ!」
「それじゃあ、各自、攻撃体勢に入ってくれ。」
俺がそう指示をし終わった時、マジカルから、声がかかる。
「楽夜、最適な術の組み合わせが決まったよ。今から放とうと思うんだけど、良い?」
「良いぞ。術の詠唱を始めてくれ。シュート、攻撃の準備だ!」
俺が、そうマジカルとシュートに指示をすると、二人は、攻撃の準備を始める。そして、
「敵を斬り刻んで! 『暴風』! 『トライブレード』!」
とマジカルが術を放つのと同時に、
「行け! 『ロケットシューター』!」
とシュートからも矢が放たれる。
その術と矢は、ほぼ同時に、鎧蛇に命中する。と、鎧蛇が呻き声を上げる。やはり、効いているようだ。
その隙を狙って、俺とエミルが攻撃を始める。
「これでどうだ! 『オーバーブレード』!」
「くらって! 『ハンマーブラスター』! 『フルスイング』! 『ぐるぐるスイング』!」
この猛攻で、さらに、鎧蛇は大ダメージを受けたようだ。
そして、次に攻撃を加えるのは、オリクだ。
「これならどう。『致命銃』。『ライフスマッシュ』。『三段撃ち』。」
オリクが、即死通用のラインを割るように、攻撃を加える。
「援護するぜ。『連続突き』!」
ジョンも援護する。が……
「楽夜、まだ即死のラインを切らないわ!」
そうエミルが叫ぶ。だが、俺は、焦らない。
「エミル、まだエネルギーは残ってるか?」
「ええ。さらに攻撃を加えて、即死を付与できるようにして、って事でしょう?」
「ああ。頼むぞ。」
そう俺とエミルが話し終わると、エミルは攻撃に移る。
「これでどうかしら? 『ハンマーブラスター』! 『フルスイング』! 『ぐるぐるスイング』! 『打ちつける』!」
エミルが、ハンマー技コンボを放つ。と、その時。
「楽夜! 鎧蛇に即死が通用するようになったわよ!」
そうエミルが俺に伝える。俺は、すぐさま、オリクに指示する。
「オリク、やれ!」
「了解。『連射』!」
オリクの放った銃弾が、鎧蛇に命中する。と、鎧蛇の巨体は、徐々に倒れていき、やがて、石畳の上に倒れこむ。そして、鎧蛇は、光の粒子となって消えていった。
「勝ったぞ――っ!」
俺は、笑顔でそう叫んだ。
ちょっとした強敵(?)を退けた楽夜達。そんな彼らに、更なる強敵が襲いかかる。
果たして、楽夜達は、更なる強敵を退ける事ができるのか、はたまた……
次回、第二編、少女襲来編スタート! お楽しみに!




