第四章 最強を名乗りし者 2 楽夜VSエリュン
「くらえ! 『高速斬り』!」
俺は、素早くエリュンの背後に回り込み、不意打ちを仕掛ける。エリュンは、反応が遅れ、回避ができなかった。俺は、エリュンにダメージを与える事に成功した。が、その直後、脇腹に強烈な痛みが走る。
「がっ……」
俺は、壁まで飛ばされてしまう。が、即座に体勢を立て直した。
と、その間に、エリュンが、武器をハンマーに持ち替える。
「さ~て、最後に、一発華麗に打ち込んで、気持ちよく終わるとしようかな!」
エリュンは、そう言うと、ハンマーを振りかぶりながら、俺に向かって、突進して来た。その動きは、重いハンマーを持っている割には素早い。が、俺よりも速いはずがない。俺は、横に跳び退いて、エリュンの攻撃をかわす。
が、俺とエリュンの間は、当然縮まっていた。そこで、エリュンは、さらに攻撃を繰り出す。
「いくよ! 『ホームラン』!」
エリュンは、そう唱えると、俺との距離をグッと縮め、ハンマーをフルスイングする。
俺はとっさに盾を構え、大ダメージをくらう事は免れた。が、俺は、技名の通り、俺は、打たれたボールのように、天井に向かって飛んでいく。その結果、俺は、やはり天井に叩きつけられて、ダメージを受ける。さらに、地面に落下し、またもやダメージを受ける。
俺は、あまり大きくは無いが、ダメージを受けてしまった。すぐに体勢を立て直せるくらいのダメージだったから良かったものの、もしも、『ホームラン』をまともにくらっていたなら、俺は今頃、負けを認めるしか無くなっていただろう。
さて、エリュンは、一向に疲れる気配が無い。しかも、『激流』と『ライトニングサンダー』で大きくエネルギーを消費したはずなのに、そこからさらに、『ホームラン』を出してきた。ということは、恐らく、エリュンのエネルギー量は、俺の数倍以上はあるということだ。
が、こいつにも、エネルギー量の上限はあるはずだ。ならば、エネルギーを使い切らせて、行動不能にさせてしまえば良いのではないか――とも思ったが、あまりにも無謀すぎる。大体、その作戦を実行に移したところで、全ての攻撃をかわしきれるとは到底思えないし、そもそも、残り時間内にエリュンのエネルギーが尽きるとも思えない。
それなら、この作戦ならどうだろう。
「『分身』、湧き出ろ! エリュンに一切の行動を取らせるな!」
俺がそう指示すると、『分身』が十体程出現する。
そう、俺の作戦は、エリュンを動けなくして、時間を稼ぐ作戦だ。
しかし、エリュンは、最初の分身が自身を掴む直前に、『ぐるぐるスイング』を繰り出した。分身がハンマーによって飛ばされて行く。さらに、エリュンに近づいた他の分身も、同様に吹っ飛ばされていく。
その結果、エリュンを捕らえる作戦は、失敗に終わる。
と、エリュンも、反撃に出る。
「お返し、かな。『鏡霧分身』、召喚!」
エリュンがそう言うと、俺を囲むようにエリュンの分身が十体、出現する。が、その分身は、ただの分身では無かった。
どのエリュンを見ても、本体に瓜二つ。本体とどこも異なる点が無いのだ。
普通の分身ならば、必ず、どこかに、本体とは異なる点がある。背丈が違っていたり、服装が違っていたり、などなど。だが、この分身には、どこにも違うところが見受けられなかった。
だが、その分身に困惑している場合ではなさそうだ。
「さて、クライマックスだね! 行くよ!」
そう言って、エリュン達が襲いかかって来たのだ。もう、躊躇っているひまは無さそうだ。
俺は、刀を構えて、エリュン達を迎え撃つのだった。




