第四章 最強を名乗りし者 1 エリュンへの挑戦
俺は、自分とエミルが異世界人である事をジョン達に明かした後、この世界の事を詳しく訊いていた。
ジョン曰く。
この世界には、四つの国が存在する。この迷宮があるリルド王国、リルド王国の国境付近に城が建っており、そこを首都として、他の国へと睨みを利かせているヒューリ国、大昔にヒューリ国と戦争をしたことがあり、今もヒューリ国を目の敵にしているグルード国、そして、この三つの国全てが、未だに一度も手を出した事がない、タブーと化している、五大魔物占領国である。
そして、先程も聞いた通り、現時点では、この世界には、俺達以外の異世界人は存在しない……はずだ。はずだ、というのは、あくまでも、調査が進んでいるところでの現状なので、調査が進んでいないところには、異世界人が存在するかもしれないから、だそうだ。
その、異世界人が存在する国の有力候補として挙げられているのは、五大魔物占領国である。恐らく、理由としては、五大魔物の住み処となっていて、相当頭のおかしいやつしか入らないし、入ったら最後、帰って来れないから、だろう。
そこまで話を聞くと、ジョンが、現実世界での俺の生活を知りたいと言ってきたので、ジョンに話してやった。
と、その時。
大扉が力強く開け放たれ、一人の、子供のような人が入ってきた。
「誰だ!」
そうジョンが訊くと、驚きの答えが返ってくる。
「楽夜さんやエミルさんなら知ってると思うけど、一応名乗っておくね! 私はエリュン! 宜しくね!」
「エリュン!?」
「嘘だろ!?」
俺とエミルは、そう驚くと、お互いに顔を見合わせる。
「エミル、知り合いなの?」
マジカルがそう尋ねると、エミルは、こう答える。
「知り合いどころじゃないわ! 私や楽夜を生き返らせてくれたのは、このエリュンなんだよ!」
「えっ!?」
マジカルも驚いている。
まあ、そりゃあな。
死んだ人を生き返らせるなど、普通、一人では不可能な事なのだ。そのような存在が目の前にいるのだから、驚くのも当然だろう。
さて、俺達がそんな会話をしていると、エリュンが、話を再開する。
「今回の目的を話すね! 今日は、楽夜さん達の力試しに来たの!」
「力試し?」
「ちょっと待ってくれ。俺達とエリュンの間には、大きな力の差があるだろう。いくらなんでも、その差を埋めるのは……」
俺がそう心配していると、エリュンから返答が。
「それについては安心して! 今回は、戦闘ルールを、『600リミット耐久戦』にするからね!」
「600リミット……10分か。つまり、10分間、誰か一人でも立っていられたら、俺達の勝ちって事でいいんだな?」
「うん、その認識で合ってるよ! さて、楽夜さん、この勝負、受けてくれる?」
俺は、即答は避けたものの、エリュンを待たせるのも悪いと思い、高速で思考を始める。
(10分間生き延びろ、か。しかも、エリュンみたいなあからさまにヤバそうなやつから、か。流石に無理があるか? いや、でも、エリュンも力試しと言っている以上、本気で俺達を殺しにかかってくる訳では無さそうだ。それに、エリュンの力も見てみたいしな。ここは一度……。)
「よし、いいだろう。その勝負、受けて立とう!」
「ちょっ、楽夜、本気なの!?」
「ああ、本気だ。エリュンも、本気で殺しに来る訳じゃ無さそうだしな。それに、いつもに比べたら、10分間生き延びるくらい、俺達ならできるだろ?」
「う~ん、まあ、確かに、ここまで、いろんな敵と戦ってきたけど、どれも撃破に最低一時間はかかってたものね。それに比べたら、まだマシな方かしらね。」
「だろ?異論があるやつはいるか?」
俺はそう言い、仲間達の顔を見回す。異論がある者はいなさそうだ。
「じゃあ、そう言う訳で、エリュン、対戦宜しく頼む!」
「うん!」
こうして、俺達対エリュンの対決が決まったのだった。




