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幕間 エリュンの動き

 エリュンは、『死後の世界』で、楽夜やエミルが倒され、ここにやって来るのを待つ。が、エリュンは、楽夜達を待つためだけにここにいるのではない。

 エリュンは、楽夜とエミルの行動を常に監視している。さらに、楽夜達が簡単に攻略できないように、ちょこっとゲーム世界に手を加えたりもしていた。

 ここでは、そんなエリュンの動きを、楽夜達の行動と合わせて見ていこう。


      ・・・・・・・・・


 まずは、楽夜のゲーム世界への転移時だ。エリュンは、自らのスキル、『脳内話』を使い、楽夜の脳内に話しかけ、楽夜の了承が得られたところで、『異界転送術』を発動し、楽夜をゲーム世界へ送り込んだ。それから、『死後の世界』へと戻ったエリュンだったが、その頃、『死後の世界』は慌ただしく動いていた。

 『死後の世界』では、エリュンの分身達が、突如現れた、巨大な機械と向き合っていた。それも、エリュンの分身が十体以上で取りかかっても、手が足りない程だ。

 その機械は、『迷宮の守護者』の中身を弄るためにあった。そして、すでに、エリュンの分身達によって、『迷宮の守護者』が弄られつつあった。

 そこへ、楽夜の転送が終わったエリュンが帰って来た。


「分身、戻って!」


 エリュンがそう一言指示しただけで、エリュンの分身達は、主の元へと戻っていく。そして、全員が戻ると、エリュンは、機械に向き合い、分身達によって弄られた状況を確認する。


「それとそれとが弄られてるから……特に問題は無さそうだね。」


 エリュンは、そう呟くと、『空間隔離術』で機械を隠す。そして、スキル『監視』を発動し、楽夜の監視を始めたのだった。


      ・・・・・・・・・


 次に、ニャーロ戦だ。

 この時、機械の機能によって、機械が映し出す場所が、迷宮の守護部屋に固定され、いちいち『監視』を発動しなくても、モニターに守護部屋の様子が常時映し出されるようになっていた。

 この時、『死後の世界』の住人、いや、『死後の世界』をさ迷っている者達の魂が、巨大な機械の周りに集まり、巨大な機械のモニターに映し出されている、楽夜達の戦闘の様子を見ていた。この戦いに死者の魂達も興味津々のようだ。特に、どちらが勝つかの賭け事に集まっていた。

 エリュンも、最初の内は、楽しそうに観戦していたが、突然、『監視』を発動し、どこか別の場所を監視し始めた。

 そこは、何者かに操られた少女の所だ。エリュンは、楽夜達の戦いの様子を見る時よりも、よほど興味深そうに見ていたが、現状、楽夜に直接的な影響が無いと分かると、『監視』を解除し、再び、楽夜の戦いに目を向けた。


      ・・・・・・・・・


 次は、ジュリン戦だ。

 この戦いは、エリュン一人で見ているため、機械を好きに弄る事ができる。

 そこで、エリュンは、ジュリンを乗っ取り、エリュン自らが、ジュリンを操作する事にした。が、それがなかなか難しい。ジュリンの技には、ジュリンと同じ種族しか使えない、固有技が多く、その技を制御するのが、かなり難しいのだ。

 それでも、無理やり体を慣らし、楽夜達のこれまでの戦い方の傾向から、楽夜達の次の行動を予測し、それに対策をしながら戦っていたので、何とか善戦できていた。

 しかし、楽夜を殺した瞬間、エリュンに危機が訪れる。

 楽夜を殺したということは、楽夜が、この『死後の世界』にやって来るという事だ。つまり、このままだと、エリュンがジュリンを動かしている事がバレるという事だ。

 楽夜に、この世界をエリュンが動かしていることが知られるのは避けたい、そう思ったエリュンは、すぐさま自身の分身を召喚する。そして、その分身と、機械の操作をバトンタッチし、エリュン自身は、『空間隔離術』を発動し、エリュンの分身と機械を別空間に隔離した。

 そして、『死後の世界』に来た楽夜の対応をし、楽夜をゲーム世界へ戻した後、分身と機械を戻し、再びエリュンが操作をしたが、結局は、エリュンは負けてしまったのだった。


      ・・・・・・・・・


 次は、ゴブリン戦だ。

 エリュンは、ゴブリン戦では、大人しく戦いの様子を見守っていた。そこへ、三人の人影が近づく。


「エリュン様、異世界人に敗北したと聞き、駆けつけました。お怪我はありませんか?」

「うん! 大丈夫だよ! それじゃあ、せっかく四人で集まったから、話し合いでもしよう!」


 エリュンのその一言で、超真面目な話し合いが始まった。


「それでは、エリュン様、まず、あの男についてはいかがなさいますか。」

「勿論、ゲーム世界をクリアするまでは脱出できないようにするし、六回死んだらゲームオーバー。それがどうしたの?」

「いえ、ただ、あの男は、ゲームに対する豊富な知識と、高いゲームスキルを所持しています。そうなると、その条件では軽すぎるのでは?」

「確かに、少し軽いかも知れないけど、楽夜さんには、ゲーム世界をクリアしたら脱出できるって言ったけれど、ゲームは一個だけとは言ってないから、少しズルいかもしれないけど、いくつかゲーム世界を用意して、クリアまでにかかる時間を伸ばさせるつもりだし、例えクリアしてきたとしても、最後には私が相手をする事になるから、どの道、楽夜さんとエミルさんは地獄を見ることになるはずなんだ。だから、この条件でも問題ないよ。」

「なるほど。ところで、ここで一つ私から提案なのですが……」

「どうしたの? エリュリンド。」

「いつか、私に出撃をさせて頂けませんか? 私達も、あの世界では例を見ない強さです。エリュン様には遠く及びませんが、あの者達を苦しめる事など、容易い事です。ぜひ、私共に出撃の機会をお与えください!」

「う~ん、でも、今、あの世界に出撃しても、楽夜さん達を苦しませるどころか、残機を使い果たして、私の出番が無くなっちゃうし、面白みも無くなっちゃうからなぁ。それに、万が一、楽夜さん達が勝っちゃって、エリュリンドやエリュザイン、エリュゾームの出所を疑われたら、最悪、私の正体がバレちゃうかもだから……。エリュリンド、いずれ出撃許可は出すだろうけど、それは今じゃないよ。もう少し待ってて。」

「承知致しました。」

「エリュン、俺からも提案があるんだが、良いか?」

「うん、何?」

「あの異世界人らは、この戦闘で、異常に強くなる。だから、エリュンともいい勝負ができるようになるはずだ。そこで、だ。ここでエリュンが出撃して、忠告代わりに、一度痛い目を見せてやるってのはどうだ?」

「もし私が負けたら?」

「それは、ここにエリュンの複製を残して行けばすむ話だろ?」

「そう……だね。エリュゾームの言う通り、楽夜さん達は、順調とは言い難いけど、敗北という屈辱を味わった事はないね。なら、一回、痛い目を見せて、私の強さと、耐えきれないくらいの苦しみを、思う存分味わわせてあげよう!」

「お待ちください。エリュン様。その行動は、あの者達に、疑いの種を植えつけるきっかけとなってしまうのでは?」

「それについては大丈夫だよ。楽夜さん達には、力試しと伝えておけば疑われなくて済むと思うよ。本気で殺しにかからなければ、ね。」

「その通りだと思います。では、エリュン様が直々に出撃なさると?」

「うん、そうだよ。一度は痛い目に遭って、この世界の厳しさを教えてあげないとね。」

「了解しました。どうか、ご武運を。」


 そう言うと、三人は、どこかへと去っていき、エリュンは再び一人になる。


「腕が鳴るなぁ。楽夜さんと本気で戦えるなんて。でも、手加減はしないよ。」


 エリュンは、そう呟くと、勝負に向けて、準備を始めた。その期待が、その日の内に消え去るなど、誰も予想する事はなかった。

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