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第三章 無双と枷 2 弱体化

 俺が悪魔を討伐したわけだが、まだ、エミルは元に戻っていなかった。つまり、悪魔はハッタリを言っている訳では無かったのだ。

 実は、俺は、エミルを救う作戦を、一つ思いついていた。その作戦は、エミルを一旦『死語の世界』に送ってから、エリュンにこっちの世界《ゲーム世界》に送ってもらうというものだ。が、この作戦が成功するかどうかは、俺には全く分からない。だが、エミルを救うための手段がこれ以外に思い付かない以上、この作戦を実行に移すしかない。


「エミル、お前の相手は俺だ!」


 そう叫び、エミルの気を引き、エミルを俺の方へ誘導する。


(くっ……止めた方が良いのか……? だが、やはり、やるしかないか……)


 俺は、覚悟を決めて、エミルに斬りつける。エミルは、俺に斬られたところを押さえ、うずくまる。


「頼んだ、エミル。後はお前とエリュン次第だ。何とか、帰ってきてくれ……!」


 俺は、エミルとエリュンを信じて、エミルに斬りつける。


「うっ……」


 エミルは、そううめき声を出すと、倒れる。


「楽夜!?」


 そうジョンは驚いたような声を上げるが、無理も無いだろう。仲間を、それも、俺が「殺すな」と指示した、最も大事な仲間を、俺が殺してしまったのだから。


「おい、楽夜! 話が違うぞ! お前、自分で、エミルを殺すなって言ってただろうが!」

「ああ。」

「何でそんなに冷静なんだよ! 楽夜、お前、気でも狂ったのか!?」

「いや、これは、エミルを救う作戦だ。」

「はぁ?」


 ジョンはそう言い、訳が分からないという表情で俺を見てきた。ジョンには理解してもらえなかったようだ。


「私にも理解できない。」

「よく分かんねぇけど、要は、無謀な挑戦っていう事だろ?」

「何言ってるんだよ、楽夜!? エミルを殺したら、結局意味無いじゃねえかよ!」

「そうですよ、皆さんの言う通り、楽夜様の言っていることは、全く理解できません。」


 ジョン以外の皆も、理解できなかったようだ。


「つまり、楽夜、お前は、エミルを救うために、エミルを殺したと。全く理解ができないな。」


 ジョンが、他の皆の意見をまとめて、俺に伝えてきた。そうだろうな、と思いながら、俺は、エミルの帰りを待つ。

 その間、一人だけ、何の話をしているかも分からず、困惑している者がいた。


「……ん? 何の話?」


 そう、目覚めたばかりのマジカルだ。マジカルだけ、おいてけぼりにされていたが、もう一回説明する気にもなれないので、マジカルには悪いが、マジカルはおいていきっぱなしにした俺なのだった。


      ・・・・・・・・・


 気がつくと、エミルは、真っ白な空間にいた。


「ここは……どこなの?」


 エミルは立ち上がり、意味も無く歩いてみる。と、エミルの脳内に、声が流れ込んでくる。


『あはは! 初めまして! 私はエリュン! 宜しくね!』


 そう、それは、楽夜が聞いたのと同じ、エリュンの声だった。


「エリュン……? ああ、楽夜が話してた子ね。私はエミルよ。宜しくね。」

『うん! さて、本題に入るね! 楽夜さんから聞いているだろうけど、私は、ゲーム世界の中で死んじゃった楽夜さんやエミルさんを生き返らせる事ができるの!』

「え? ゲーム世界? 生き返らせる? どういう事?」

『一つずつ説明していくね! まず、ゲーム世界っていうのは、楽夜さんの作った『迷宮の守護者』の中、つまり、この世界の事を指すの!』

「楽夜の作ったゲームが、この世界ってこと?」

『その通り! それで、次は、生き返らせる事についてだね! 分かりやすく説明すると、まず、エミルさんが死んだら、エミルさんの傷ついた体を修復して、次に、エミルさんが、さっきのゲーム世界に戻りたいって私に言ってくれたら、すぐに、楽夜さんの元に戻してあげるの!』

「へえ~! すごい! エリュン、そんな事ができるんだ!」

『うん! でもね、楽夜さんからも聞いたと思うけど、生き返りができるのは、五回までで、六回目に死んじゃったら、現実世界でも死んじゃうし、この『死語の世界』を一生さ迷い続けるハメになっちゃうから、気をつけてね!』

「分かったわ! じゃあ、エリュン、楽夜の元に戻らせて!」

『分かった! 頑張って来てね!』


 そのエリュンの声が聞こえると、エミルの意識は、そこで途絶えたのだった。

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