第三章 無双と枷 1 ゴブリンの軍勢
オリクに剣が当たる――俺やエミルがそう思い、絶望した時だった。
中位兵士ゴブリンの背に、矢が突き刺さる。
「シュート!」
そう、シュートが、中位兵士ゴブリンの気を引いてくれたのだ。
中位兵士ゴブリンは、シュートの方へと向かっていく。
「エミル、シュートの援護に回ってくれ。シュートは、近接戦闘には不向きだ。その弱点をカバーしてくれ。」
「了解したわ。」
エミルはシュートの元へと向かった。俺は、残っているゴブリン達を始末しに向かう。
ゴブリン達は、元々オリクを狙っていたらしく、まっすぐ俺とオリクの元へ向かって来た。そのゴブリン集団を、俺は、回転しながら斬りつけ、蹴散らしていく。
と、魔法使いゴブリンが、火球を作り、俺にぶつけて来た。俺は、その魔法使いゴブリンに対し、
「邪魔だ!」
と叫び、詠唱中を狙って、その魔法使いゴブリンに斬りつける。
そうしながら、ゴブリンの数を減らしていると、ゴブリン集団の中から、大きなハンマーを構えた、筋肉質な体つきの、リーダーらしきゴブリンが出てきた。俺は、さっきの中位兵士ゴブリンがリーダーじゃ無かったのかよ、と思いながら、
「ここでようやくリーダーのお出ましか! やってやる!」
と、見た目の威勢だけは良くし、リーダーゴブリンに立ち向かう。
「行くぞ! 『斬り捨てる』!」
俺はそう唱え、力を込めて、リーダーゴブリンに斬りつけた。が、流石はリーダー、と言うべきだろうか、他のゴブリン達とは違い、一撃で倒れたりしないようだ。さらに、そのリーダーゴブリンは、ハンマーを大きく降りかぶり、俺に思いっきりそのハンマーを叩きつける。すると、俺の体は宙を飛び、天井に打ち付けられた。さらに、そこから、地面に落下し、またダメージを負う。
リーダーゴブリンの攻撃から、強打ダメージ、落下ダメージと三連続でダメージを受けた。が、一撃一撃のダメージは軽いため、重傷にはなっていない。
そこへ、ジョンが助太刀にやって来る。
「これでもくらえ! 『心臓突き』!」
そう唱えながら、ジョンは、突進しながら、リーダーゴブリンに突っ込んで行く。ジョンは、突進の勢いをつけて、より『心臓突き』を強力にして繰り出し、リーダーゴブリンを殺すと言う作戦のようだ。これは、きっと勝てた――そう思っていた俺だが、次の瞬間、それは甘い考えだったのだと知る。
リーダーゴブリンは、ハンマーを大きく振り、ジョンの突剣を飛ばした。突剣は、石畳に突き刺さる。さらに、ジョンに、リーダーゴブリンが攻撃を仕掛ける。
「しま……がっ……」
脇腹に強烈な一撃を入れられたジョンは、あまりの痛みに、うずくまり、顔を歪ませる。
「ジョン、大丈夫か?」
「いや……楽夜、一人で頑張ってくれ。俺は、オリクと同じように、休息を取らせてもらいたいと思う。」
「分かった。ゆっくり休んでてくれ。」
ジョンは、オリクの横に横たわる。
「俺が相手だ! かかって来い!」
俺は、そう叫び、リーダーゴブリンの気を引くために、飛び出して行く。
「行くぞ! 『高速斬り』!」
俺は、瞬速の一撃でリーダーゴブリンを倒しにかかる。が、俺とリーダーゴブリンの間に、別のゴブリンが入って来て、そのゴブリンが、リーダーゴブリンの身代わりとなる。
「ああ! あいつさえいなければ、リーダーゴブリンを倒せてたってのに!」
そこへ、助っ人がやって来る。
「楽夜! 私も、ほんのちょっとだけど、手助けするよ!」
そう、マジカルの参戦である。
「行くよ! 『豪火』!」
そう唱え、リーダーゴブリンに、『火炎の呪い』を付与した。が、それだけだった。
「楽夜! エネルギーが尽きちゃった!」
「分かった! 後は俺に任せろ!」
「ええ!」
マジカルは、こうして、一旦引いた。と、ここで、俺は、あることに気づく。
それは、これ以上の援軍は望めないということだ。
エミルとシュートは、残っているゴブリンの始末で、オリクとジョンは行動不能。マジカルは、エネルギー切れ。レックスとガードンは、攻撃技を習得していないため、戦力にならない。となると、俺が負けると、エミルとシュートの負担が大きくなってしまう。勝利を目指すのならば、ここで俺が勝利しなければ。
と言ったものの、俺も、エネルギーが残り2しかない。出せる技も、『斬り捨てる』二発のみで、それを使いきってしまうと、後は、ただ斬るだけの通常攻撃と、俺の編み出した、回転しながら斬ると言う技のみしか出せない。
と、ここで、思わぬ援護が。
ゴブリンの軍勢の頭上に、複数の矢が出現する。その矢が、一斉に降り注ぐ。
「危ねっ!」
俺の頬を、矢が掠め、俺は、その矢をとっさに避ける。周りを見ると、リーダーゴブリン以外のゴブリンが、全て倒れていた。
これはチャンスだと即座に気づいた俺は、即座に攻撃を仕掛ける。
「これで最後だ! 『斬り捨てる』!」
俺の刃が、リーダーゴブリンに当たる。と、リーダーゴブリンが、うめき声を上げて、粉々に砕け散る。
そう、俺の勝利だ。
そして、エミルの方に目を向けると、エミルも勝利を収めていた。
こうして、俺達の勝利となったのだった。




