第三章 無双と枷 1 ゴブリンの軍勢
俺は、回転しながら、複数のゴブリンを斬りつけていく。俺に斬られたゴブリン達は、次々に消えていく。
その間に、エミル達も仕掛けていた。エミルは、
「くらって! 『ぐるぐるスイング』!」
と唱え、自身の周囲のゴブリンを倒していく。
ジョンは、突剣で、ゴブリンの心臓を正確に突き刺し、エネルギー消費無しで、『心臓突き』と同等の効果を出すというスゴ技を出していた。
シュートは、壁の石と石の隙間に足を入れ、バランスを取ってから、矢を放って、着実に敵の数を減らしている。
ゴブリンの数も、最初の半分くらいにまで減った。
と、オリクが倒すはずだった四体の中位兵士ゴブリンが、俺の元へ向かってやって来た。俺は、四体同時に相手をしたら、確実に負ける。だが、俺には、エミルがいる。
「エミル、手伝ってくれ! 俺だけじゃ勝てないんだ。」
「分かったわ。いくわよ! 『打ちつける』!」
エミルがそう唱え、中位兵士ゴブリンにハンマーを打ちつけた。が、中位兵士ゴブリンは、盾でエミルの攻撃をガードし、ダメージを軽減してしまった。そこで、俺が、追撃の一撃を見舞う。その攻撃をくらった中位兵士ゴブリンは、不意の一撃に反応できず、消える。これで残りは三体だ。
「くらえ! 『高速斬り』!」
二体目は、俺の『高速斬り』で仕留めた。
その間に、エミルは、強烈な一撃で、三体目を仕留めていた。
これで、残るはあと一体だ。
と、残っている中位兵士ゴブリンが、急に鳴き始めた。すると、その声に反応したゴブリン達が集まってくる。そして、俺達の前に、百余りのゴブリン達が立ち塞がる。
「なるほど……こいつらを倒さないと、あの中位兵士ゴブリンに挑む資格は無いって訳か……」
「そう言う事みたいね。でも、私達にとって、ただ数が多いだけの弱いゴブリンなんて、敵じゃないわ!」
エミルは、そう言うと、ゴブリン達に飛びかかっていく。俺も、それに続く。
エミルは、前方にいるゴブリンを、ハンマーで次々に吹っ飛ばしていく。俺も、周囲にいる敵を、回転しながら斬り、ゴブリンの壁を崩していく。時々、死角から、ゴブリンの反撃が来るが、大した威力ではないため、問題外だ。
五分ほどして、立ち塞がっていたゴブリン達を片付け終わった。が、ゴブリンの壁の先には、中位兵士ゴブリンの姿は無かった。
「何!? どこに行ったんだ!?」
「楽夜、あそこよ!」
エミルが指差す方を見ると、走る中位兵士ゴブリンの姿が。そのゴブリンの行く先には、倒れているオリクがいる。
「マズい! 今オリクに追い討ちをかけられたら、耐えられないぞ!」
俺とエミルは、オリクを守るために走る。が、元々差が開いていたため、追いつく事が出来ない。そして、中位兵士ゴブリンが、オリクの元へ着いてしまった。まだ、俺達とオリクとの間には、差が開いているため、オリクを守る事が出来ない。
中位兵士ゴブリンが、剣を振り上げ、オリクに向かって、剣を振り下ろす。
「駄目ェ――!」
エミルのその叫びが、部屋中に響き渡った。




