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第ニ章 更なる戦い 3 苦痛の時間

 樹木が次々と俺に襲いかかって来る。マズい――俺がそう思った瞬間だった。


「はぁ――!」


 と声を出し、ジョンが樹木に一突きする。


「ジョン、ありがとう!」

「そんな事言っている場合じゃないぞ! 見ろ!」


 そう言ったジョンの指さす方向を見ると、そこでは、樹木が途中で枝分かれし、樹木は、無数の枝と化していた。


「楽夜、これは……」

「ああ。ジュリンは、ジョンを殺し、俺を限界まで苦しめようとしている!」

「その通りよ。あなた達二人とも、樹木の手にかかって、粉々になってしまいなさい!」


 そのジュリンの言葉で、樹木が一斉に振り上げられる。


「これは、私に逆らったことへの罰よ。樹木の手にかかって永遠の死を与えられる代わりに、幾度も苦痛の叫びを上げて、私を楽しませて! いくわよ!」


 そうジュリンが言うと、樹木が振り下ろされ、無数の枝が俺とジョンを傷つける。


「くっ……小枝のくせに……なかなかやるな……」


 ジョンは軽くうめき声を上げるだけにとどまったが、俺は、


「あぁ――っ!」


 と大きく叫び声を上げる。

 さらに、樹木の攻撃は一度では終わらない。樹木は何度も上下し、俺達にダメージを蓄積させていく。さらに、その速度も段々と上がって行き、遂に、身を切り裂く程の速さに到達する。


「これは……小枝だからといってはいけなかったな……くっ……」


 と、ジョンも限界が近づいているようだ。


(このままだと、為す術もなく負けて、永遠にジュリンの為に苦しい思いをしなければならなくなるな。それは絶対に避けなければならない。だが、俺は攻撃が出来ないな……だとすると……そうか!)


 俺は、ふといいアイデアを思いついた。それをすぐにジョンに伝える。


「ジョン、俺の下に入れ!」

「何でだ!?」

「いいから早く入れ!」


 ジョンは、少し悩んだ後、


「分かった。今いくぞ!」


 そう言い、ジョンが俺に向かって走り出す。

 その時、俺の狙いに気がついたのか、ジュリンが樹木にこう命令する。


「その男の進路を塞いで! それ以上、その男を動かさせないで!」


 すると、その命令を受けた樹木達が、ジョンの前へと動き、次々と重なって、やがて、樹木の壁となり、ジョンの前方を塞ぐ。ジョンは、あわてて別の方向から、俺のところへ来ようとしているようだ。が、その行動を取ることすらも、ジュリンの計算内だった。ジョンは、すでに四方を樹木の壁に囲まれており、動くことが出来なくなっていた。すると、徐々に樹木の壁は、ジョンに迫っていく。ジョンを押し潰そうとしているのだろう。


「ジョン! 樹木なんかに負けるな! その壁を突き破れ!」


 俺がそうジョンに向けて叫ぶ。すると、樹木の壁に穴が開き、そこからジョンが顔を覗かせる。


「待ってろ、楽夜! 今そっちに行くからな!」


 しかし、樹木は次々と重なって行き、ジョンが開けた穴も、すぐに塞がってしまう。その間にも、ジョンのいる空間は、どんどん狭くなっていく。そして、ズシンという音が響き、樹木の動きが止まる。


「ジョン……? ジョン、返事をしてくれ!」


 俺は、生きていてくれと願いつつ、そうジョンに呼び掛けた。が、返事は無い。


「ジュリン! ジョンはどうなったんだ!」


 俺は、返事が返ってくるはずもないと分かっていながらも、そう問いかけた。と、ジュリンから答えが返ってくる。


「あの男は、今頃、壁の中でぺしゃんこになっているはずね。私が助けていなければ。」

「何だと?」

「あの男は、あなたなんかより、優秀な戦力よ。そんな人を簡単に捨てるのは勿体無いと思ったの。その男なら、ここにいるわ。」


 ジュリンがそう言うと、ジュリンの隣に、樹木の壁に潰されてしまったはずのジョンが出現した。


「ジョン! 樹木の壁に押し潰されてたはずじゃ……?」


 俺のその問いに、ジョンが答える。


「ああ。確かに、俺はあの時死んだ。が、ジュリンのスキルによって、生き返った。というよりは、生き返らされた。俺は、ジュリンに、この肉体と、永遠の生を授かった。だが、それと同時に、ジュリンに逆らえないように、刻印が刻み込まれて、俺は、ジュリンの配下になったんだ。だから、俺とお前は、今から敵だ! 行くぞ!」


 そう言い、敵となったジョンが、俺に襲いかかる。


「くらえ! 『心臓突き』!」


 そうジョンが唱え、俺に向けて、突剣を突き出す。その突剣は、ジョンの狙いどおり、俺の胸に突き刺さる。


「ああ――ッ!」


 俺はまたも苦痛の叫びを上げる。その俺の叫びを聞いたジョンが、笑い出す。


「ははははは! 楽夜、俺、お前の敵になって、初めて分かったぜ! 苦痛の叫びを聞くことが、こんなにも楽しいってな!」

「そうね。苦痛の叫びを聞くのは、本当に楽しいわね! もっと、もっと! 苦痛の叫びを私達に聞かせて!」


 苦痛の時間は終わらない。物理的な激しい痛みと、孤独から来る精神的な痛み、その両方が襲いかかる。そして、苦痛の時間は、さらに大きく膨れ上がっていく。

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