第ニ章 更なる戦い 3 苦痛の時間
「さあ、始めましょう! 男を部屋の真ん中に追い込んで!」
ジュリンがそう言うと、何本もの樹木が、俺を叩き潰そうとしてくる。俺は、その樹木を刀で斬り倒していく。樹木は、スパッと斬れていく。が、すぐに再生してしまう。
「いくら斬っても無駄よ! この樹木は、即座に回復するのよ!」
そうジュリンが言っている間にも、樹木は、俺を、部屋の真ん中に追い込もうとしてくる。と、その時、背後から、樹木が迫って来た。俺は、反応が遅れてしまい、樹木にはね飛ばされてしまう。
「そうよ! さあ、私と樹木を楽しませてちょうだい! 樹木よ、好きにやってしまって!」
そうジュリンが言うと、樹木が一気に行動する。
樹木が俺を叩いて、空中にはね飛ばす。すると、その飛んだ先には、別の樹木の姿があった。俺は、その樹木にもはね飛ばされてしまい、最初にいた方向とは別の方向に向かって飛んでいく。と、その先にも樹木がおり、またもや、俺は、その樹木にもはね飛ばされてしまう。そう、俺は、樹木に周りを囲まれており、樹木にはね飛ばされると、他の樹木に跳ね返されるという環境に置かれていた。当然、一発一発に力が入っており、樹木に当たるたびに、かなりの痛みを感じている。
「くっ……」
と俺が小さくうめき声を上げるも、樹木は全く容赦してくれない。むしろ、攻撃は強力になっていく。
俺は、ダメージを軽減するために盾を構えようとしたが、樹木に次々と弾き飛ばされていくせいで、体勢を立て直すことができず、樹木をの攻撃を、続けてまともに受けてしまう。
そして、樹木の攻撃が止まり、俺は地面に叩きつけられた。すると、俺は、急に体の力が抜けるような感覚を感じた。このまま俺は死んでしまうのか――そう思ったのだが、その時は訪れなかった。
俺は、体の力は抜けているが、姿ははっきりとある。では何故――そう思っていると、樹木が俺に向かって叩きつけられる。俺は盾を構えようとしたが、体が思うように動かない。そのせいで、樹木の一撃をまともにくらってしまう。すると、ただの一撃とは思えない程の激痛が俺の身に走る。
「アァ――!」
その俺の苦痛の叫びを聞いたジュリンは、笑いながらこう言う。
「ははははは! 無様ね! あなたは、もう、私に抵抗することもできない! もっとよ、もっと! もっと、苦痛の叫びを聞かせてちょうだい!」
それを聞いたジョンが、激昂した。
「楽夜を馬鹿にするなぁ――!」
そして、ジョンがジュリンに特攻を仕掛ける。が、
「樹木よ、対処して!」
そう命じられた樹木によって、その攻撃は防がれてしまう。
一方、俺は、さっきの激痛について、疑問を抱いていた。
「何故あんなにも強い痛みが……? 普通の攻撃だったはず……」
そう呟いた俺に、ジュリンが応じる。
「その理由について知りたいのね?」
その言葉に、俺は頷く。
「いいわ。あなたの苦しみの代償として、教えて上げる。まず、何故あなたは、死んだはずなのに、まだこの世にいられるのか。その理由は、私のスキル、『死者体現』があるからなの。このスキルのおかげで、あなたはまだこの世にいることができるの。次に、何故先程の攻撃で大ダメージを負ったのか。これは、『死者体現』の副作用のようなものね。このスキルの効果は、死者がこの世に体現できる代わりに、その者は弱体化してしまう。そうなると、冒険者として活動することができなくなるどころか、他の人と同じように生活することすら難しくなってしまうの。さらに、発動者が『死者体現』を解除したり、発動者が死んだりしたら、『死者体現』の効果を受けた者は死んでしまうの。いつ死ぬか分からない、そんな状況は、人間にとって、まさに恐怖としか言いようがないの! そんな恐怖の下に、あなたがいるの。
さて、説明はこれぐらいでいいかしら。それでは、ここからは、思う存分やらせてもらうわよ!」
その声を合図に、俺の苦痛の時間が始まるのだった。




