表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/111

第一章 冒険の始まり 4 救援と覚醒

 ラドンは、エミルとは少し離れたところで、ニャーロの分身と対峙している。

 今のところ、分身が不死であるということを考えなければ、ラドンが若干有利である。分身の不死性を考慮するのなら、実力は、ほぼ互角である。

 が、ここで、戦況は大きく動く。

 バリアに捕らわれていた楽夜が、バリアから解放された。


「楽夜! 大丈夫か!?」


 そうラドンが呼び掛けるも、楽夜は倒れたままで、返事をしない。と、楽夜が立ち上がり、ラドンに斬りかかる。

 ラドンは、ハンマーで受け流し、距離を取った。

 楽夜が、ニャーロに誘惑され、相手の軍門に降った。それは、ラドンにも数の不利が訪れたことを意味する。

 別に、一時的な力の差だけを比べれば、まだまだ、ラドンと、ニャーロの分身達は互角なのだ。だが、長期戦になるのならば、話は別だ。分身は、体力の消耗が少ない。それに比べると、ラドンや楽夜は、体力の消耗が激しい。そのため、ラドンは、時間が経てば経つほど、不利になっていくのだ。そして、力が互角なのならば、長期戦になるのは当然であって――ラドンの敗北は、確定したも同然である。

 が、ラドンは諦めることはない。冒険者時代の力や心意気は消えておらず、例え、勝つことが不可能と思えるような魔物に出会った時も、それが運命だと割り切って戦い、命の最期が訪れるその時まで全力で戦い、死という運命に抗い続けるのだ。

 という訳で、ラドンは、ニャーロの分身と楽夜を相手に、本気を見せる。


「はぁ――! 『打ちつける』!」


 楽夜に、その重い一撃をぶつける。

 楽夜は、盾でガードして、ダメージを受けるのを防いだが、衝撃を受けた腕がしびれ、刀を落とす。

 その隙を見たラドンは、再び、ニャーロの分身と取っ組み合いを始める。

 こうして、ラドン達の戦いは、硬直状態に陥ったのだった。


      ・・・・・・・・・


 一方、エミル達の戦いは、早くも戦況が大きく動く。

 女がニャーロに向けて、銃を連射する。ニャーロは、何発か当たっていて、大きなダメージをくらった様子だ。

 しかし、女は苦しげな表情をしている。


「即死効果が付与できないのか……!」


 女は、技の詠唱をせずに、『連射』を繰り出していた。この『連射』には、即死効果が込められていた。が、ニャーロの前にはその効果は通用しなかった。

 さらに、ニャーロは、エミルを狙い、容赦の無い連撃を叩き込む。

 その内の一撃を、エミルはくらってしまった。


「うっ……」


 エミルはそううめき声を上げる。が、エミルは、反射的に盾を構えており、ダメージの軽減には成功していた。

 それを見たニャーロは、一瞬驚いていたが、直後、さらに攻撃の手をきつくしていき、そこに、ニャーロの分身とオーラの魔物が加勢していく。

 オーラの魔物の爆撃をかわしたエミルは、ニャーロに飛びつかれて、身動きが取れなくなっている。

 ニャーロの分身に銃を奪われそうになった女は、ニャーロの分身と肉弾戦になる。

 さらに、身動きが取れなくなったエミルに、ニャーロが拳の連打を叩き込む。

 激しく地響きを轟かせ、時折、金属音が鳴り響く。

 そして、そこに立っていたのは、ほとんど無傷なエミルと、傷だらけのラドンだった。

 ラドンは、ニャーロの分身そっちのけで、素早くエミルに駆け寄り、彼女の身代わりとなっていたのだった。

 そして、ニャーロはというと、凄まじい殺気を漂わせていた。今の攻撃でエミルを仕留めるつもりだったのだろう。

 オーラのムチがニャーロの体中から飛び出している。そして、そのムチが、エミルとラドンを襲う。


「エミルさん、避けて!」


 とラドンが叫び、ラドンは右へ、エミルは左へと跳び、ムチの回避を試みる。が、ムチが急に加速し、ラドンに命中する。

 オーラは、ラドンの胸を穿った後、ニャーロのもとへと戻って行った。

 エミルは、すぐさま、ラドンのもとへ駆け寄る。


「ラドン、大丈夫!?」

「ああ、大丈夫です。」

「良かった。ひとまず、『光の水』を発動させるね。」


 そう言って、エミルは、『光の水』でラドンの傷を癒した。

 が、ラドンとエミルの背後には、オーラの魔物が。


「危ない!」


 そうラドンが叫び、エミルを突き飛ばす。それと同時に、オーラの魔物から爆撃が放たれる。

 爆撃は、ラドンに直撃し、激しい炎と黒煙がラドンを包み込む。そして、炎が収まり、黒煙が晴れたとき、そこには、地面に倒れ込むラドンの姿があった。


「ラドン!」


 そうエミルが叫び、ラドンに駆け寄ると、ラドンは顔を上げ、エミルに話し始める。


「すまない……俺は……ここまでのようだ……」

「だ、駄目よ! ここでラドンがいなくなったら、私じゃ、どうにもできない!」

「エミルさん、いや、エミル、あいつに勝つ方法がある。俺の力を、お前に授ける。そうすれば、あの猫魔物に太刀打ちできる。エミル、俺の力、受け継いでくれるか?」


 エミルは、少し迷った表情をしたが、直後、決意に満ちた目でラドンを見る。そして、こう言う。


「分かった。ラドンの力、私が受け継ぐ!」

「エミル、手を出せ。俺の力をお前に渡す。」


 言われるがままに、エミルは手を出す。そこに、ラドンが手を重ねる。


「これで大丈夫だ。俺はいなくなるが、もうエミルだけでも大丈夫だ。生きていけ、エミル。」


 ラドンがそう言うと、ラドンの体が、光の粒子に変わり、天に昇る。ラドンは、最後に微笑んでいた。

 その時、エミルの中の力が解放される。


「ラドンの敵は、私が討つわ!」


 エミルはそう言い、魔物達に挑みかかるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ