第十章 最後まで諦めない者が報われる時 3 クロム達との決戦
クロムは、剣を振り回し、俺の恐怖心を煽ってくる。さらに、その剣は、時々俺の体を斬りつけてくるのだ。
なかなか良い立場に回ることができない。なんとか立て直しを図りたいが……
すると、クロムは、剣を振り回すのを止め、俺の体を狙って、その刃を確実に俺に当てようとしている。
再び、クロムの猛攻が始まる。クロムの剣が、俺の脇腹を捕らえた。俺は、ネバネバしたものに捕らわれ、抵抗できない。俺の脇腹をクロムの剣が斬り裂く。
「くぅ……」
俺は、そう呻き声を上げながら、苦し紛れな表情をクロムに見せる。
「いいわぁ、その顔。まるで絶望しているようで、勝ちを諦めていない。もっとその顔を見せてちょうだい!」
クロムの剣を振る速度が、目に見える程に上がる。クロムのふるった剣が、俺の体のあちこちを斬りつけていく。俺は、どんどん増えていく体の傷に目を向ける。クロムは俺のことをいたぶっているかのように、俺を殺さないように細心の注意を払いながら戦っているようだ。俺の表情が、どんどん苦痛に染まっていく。
「くっ……クロム……」
「あなたがなんと言おうと、私は攻撃の手を緩めてあげないわよ。何故なら、私は、あなたに勝たなければいけないから、そして、あなたの苦しそうな顔をもっと見たいから。行くわよ。『滅多斬り』!」
そうクロムが唱えると、幾筋もの光が俺の体に纏い付いてくる。すると、次の瞬間、俺の体の、光の筋に纏われた部分が、激しく痛む。その痛む部分は、まるで何かに斬られたかのようにズキズキと痛む。
「がっ……」
「その顔、もっと見せてちょうだい!」
クロムはそう言うと、さらに執拗に、俺の体に斬りつけてくる。
「クソッ……やめろッ……」
「やめてあげる訳が無いでしょう? もっと激しく痛めつけてあげるわ!」
クロムが、剣を俺の体に突き刺す。その剣は、だんだんと俺の体の奥深くにまで刺さっていく。
「ガハッ……」
俺は、もう満身創痍の状態に追い込まれていた。何か、打開策は無いのか……
と、その時。クロムの首に、1本の矢が刺さる。
「何?」
クロムがそう声を上げ、後ろを振り返る。と、そこには、ドヤ顔をして立っているシュートがいた。シュートは、
「俺の大事な仲間を……楽夜を傷つけるな! お前の相手は俺だ! かかってこい!」
そうシュートが声を上げ、クロムの気を引く。クロムは、その挑発にイラッときたのか、俺の体に刺さった剣を抜き、シュートの方へ向かっていく。
と、その間に、レックスが、俺にこっそりと駆け寄ってくる。
「今、このネバネバを取り除くからな。苦しいだろうけど、ちょっと待っていてくれ」
そうレックスが言うと、レックスは、素手で、俺の体についた大量のネバネバを引き剥がしていく。すごい度胸だ。俺は、素手でこのネバネバした気持ち悪い物体を素手で引き剥がそうとは思えない。
いや、よく考えてみれば、当然の選択だったのかもしれない。俺とレックスは、大切な仲間だ。その大切な仲間を、レックスが見捨てるわけがないはずだ。
さて、レックスは、俺の体についたネバネバした物体をほぼ全て取り除き終わっていた。
「レックス、ありがとう。囮になってくれているシュートを、支配されているオリクを、クロームに捕まっているエミルを、何としても助け出すぞ!」
「ああ! 行こう!」
俺とレックスは、そう言葉を交わし、クロムに向けて走り出すのだ。
大変お待たせ致しました。二週間ぶりの更新になります。まだスランプから完全に抜け出せた訳ではないはずですので、次話の投稿まで、長い目でお待ち下さい。




