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第十章 最後まで諦めない者が報われる時 2 エミルの奪還

 クロムが、漆黒に染まった剣を俺に向かって振り下ろす。俺は、『妖斬刀・旋風』でその剣を受け止めるが、俺の刀には、クロムの持つ剣による重圧がかかって来ていた。このまま剣を受けたままでは、いずれかは、俺の刀が折られてしまう。そう考え、俺は、クロムの剣を受け流す。だが、クロムは、体勢を崩すような様子も無く、返しの一撃を見舞ってくる。俺は咄嗟に仰け反り、その一撃も回避する。

 ここまででも、すでに俺が押され、勝機が無くなって来ている事がよく分かるだろう。だが、当然ながら、これで終わりな訳が無かった。

 俺の脳天を狙った一撃が飛んでくる。俺はそれを右に飛んで避けるが、その時だった。俺の足が、何かに掴まれてしまった。


「何ッ!?」


 俺は、力ずくで足を持ち上げての脱出を試みるも、俺の足を捕まえている物はなかなか離れてはくれない。と、その時だ。俺の胸の辺りを狙って、クロムが剣を振るった。俺は慌ててしゃがみ、その一撃を食

くらうことを避けた。俺は、足を力ずくで引き上げようとするが、足に絡みついたものはかなり丈夫なようで、俺が力ずくで引きちぎろうとしても、びくともしない。


「もう、あなたは抜け出せないわ。私のその触手に捕らわれた時点で、あなたの生殺与奪権は私に差し出されるのよ」


 そうクロムが勝ち誇ったように言い放つ。だが、それはまだ甘いと俺は考える。

 俺は、その考えを行動で示す。俺は、足が捕らわれているのにも関わらず、勝ち誇ったままのクロムに向かって斬りつける。

 クロムは油断しており、距離もそう遠くなく、俺の刀の射程範囲内にいる。この調子なら、きっと、あいつに一矢報いることもできるはずだ。

 俺の刀の先が、クロムの纏う鎧に触れた――かと思ったその時。

 クロムの纏う鎧に俺の刀が触れた瞬間、クロムの鎧が膨れ上がる。そして、その鎧が弾けたかと思うと、俺の体のあちこちと、石畳の床とが、ネバネバした黒い物体で繋がれてしまった。


「あなたは本当に愉快ね。いつも私の思う壺にハマってくれるのだもの」

「おい、クロム、一体何をしたんだ?」


 俺がそう問うと、クロムは面白そうに笑い、


「簡単な話よ。あなたの刀が私の鎧に触れた瞬間、私の鎧から、そのネバネバとしたものが刀を伝って、あなたの体と床とをくっつけたのよ」


 と答える。俺は、そのネバネバとした物体を引きちぎろうとして、その物体に手を掛けるが、いくら強く引っ張っても、そのネバネバした物体はちぎれないどころか、俺の手や腕にまでくっついてきて、余計に身動きが取れなくなってくる。


「あまり余計な身動きを取らない方が身のためよ。まあ、いまとなってはもう遅いけれど、ね」


 クロムの言葉通りだ。身動きを取れば取るほど、ネバネバした物体は俺の体中にくっついてきて、余計に身動きが取れなくなる。


「さて、覚悟しなさい。あなたを弄んで、私の下僕にしてあげるわ。ハーッハッハッハッハ!」


 そうクロムが笑い声を上げるのだった。

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