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1 如月斗真

モンスターの襲来。

それが、この世の終わりの始まりだった。

各地の主要都市を中心に、ダンジョンゲートなる未知の扉が開かれ、強力なモンスターが押し寄せてきたのである。

全世界が総力を持って迎撃に当たるが、現代兵器がいずれも通じず。

たった数日で、世界がモンスターの手によって破壊された。

絶望に立たされた人類が皆、世界の終焉に、その未来を諦めかけていたとき。

超人的な能力を持ってモンスターを退ける、ハンターが現われたのである。

 

————。


「…………はあ」


その手にある日銭を眺めて、斗真はため息をついた。

最低のF級ハンターが出入りできるダンジョンは、その日暮らしでも危ういほどの金銭しか稼げない。

最高のS級ハンターなんて夢のまた夢。

治りの早い少し頑丈なだけの身体であっても、最下級ダンジョンのゴブリンを命がけで倒すのが精いっぱい。

何のスキルも持たない斗真には、その手に乗っている金額分がお似合いであった。


「…………」


数年前のゲート出現によって両親を失い、施設で暮らす妹を守るためにも、ハンターという過酷な環境へと足を踏み入れた。

しかし、想像以上に地獄だと悟った。

一瞬の判断による人の生き死に。

それは、これまで施設で守られてきた斗真には考えもしなったこと。

ほんのかすり傷でも死に至るこの世界では、上を目指すよりも今を生き残ることしか考えられない。


「…………」


街の歩道を歩く人々は、そういった死をどれだけ体験してきただろうか。

今の街々は、日本ハンター協会のハンターたちによって安全を確保されている。

田舎町で生活する人はいなくなり、各県の都市部周辺に移り住む人が増えた。

今ではダンジョンビジネスが世界中で流行している。


「…………」


――中学を卒業したばかりだというのに、むしろすぐに強くなると考えている方が甘い。

何十何百と戦場を駆け巡り、その中で培った経験や技術を高めて初めて強くなるという感覚を得るのに、新米にはまだその厳しさを理解するには難しい。

登録時に支給されたハンター用の腕輪型端末を起動して、今現在募集されているレイド募集欄を眺めている。

目当ては、難易度F級の未踏ダンジョン。

ダンジョンは突然に現れる。それは市街地であろうと関係ない。

最低難易度であろうと、一般市民にとっては災厄以外の何物でもないため、慈善活動や駆け出しハンターたちが、そういったダンジョンに集まることがある。

 

「……これだな」


報酬内に稀に、ハンターにダンジョンの私物化を許されることもある。

公共化できない小さなダンジョンほど顕著だが、斗真が目を付けたのがまさしくそれだ。

公共化されたダンジョンは入場料が必要になるが、私物化されたダンジョンは、死亡または譲渡しない限り永久的に本人のものとなり、固定資産税等の税金も取られないため、そこを拠点に活動するハンターも少なくない。


「これで少しは稼ぎが良くなる……かも」


はっきりとしない独り言を呟いて、周囲から不思議な目を向けられる斗真だが、その報酬に意識が向いていて全く気付いていない。

なんならニヤニヤとした不気味な笑みを浮かべる彼に、道を譲って離れるほどだった。


「……少しでも、強くならないと——」


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