終電なくなっちゃったね
「なんですか? セックスしたいんですか?」
「……そこまで直接は言ってないというか。でも、一緒にいたいです的な」
後輩の剣君は、何一つ嘘をつかずおべっかも言わない。そんな謎の生き様にうっかり惚れてしまった私こと衣は、やっぱり看破されていた恥ずかしさで言葉を失っていた。
「本当にそんなセリフをいう人っているんですね。なんか、漫画の中に入ったみたいで面白いです」
「そ、それでどうなのよ。その、ゴニョ……はさておき。もう一軒くらい付き合ってくれるの?」
「う〜ん、そこについては一つ疑問があるんですけど」
な、なんだろうか。恋してるながらに、私には成功しない要素の心当たりがあり過ぎる。あり過ぎて困っているくらいだ。
「な、なによぉ……」
「もしも俺が先輩とそういう関係になったら、やっぱりロリコンってことになるんでしょうか」
……はい、絶対に言われると思ってました。
今まで私にカレシが出来なかったのは、声から姿形から小5よりほとんど成長してないからです。おまけに、私はこういうちょっと変な男を好きになってしまうのでちっとも成就しないんです。
私を好きになるような男は好きにならないんです。仕方ないでしょ、バカヤロー。
「まぁ、うん。多分」
実際、さっきの居酒屋だって歳の離れた兄妹扱いされてたし。なんで私が妹なのよ、ムカつく。
「俺、別に世間体とかはどーでもいいんですけどね。先輩の事を好きになってしまうと、別れた後に次のカノジョを見つけるのが大変そうだし」
「別れを視野に入れて交際するカップルがあるかぁ!」
「例えば、自分の好きな子と似てる人を目で追っちゃう時とか、小5の子を追うことになるワケじゃないですか。キモいですよね」
「シチュエーションが具体的過ぎてビックリだよ!」
「あと、無茶したら壊れちゃいますよ。ちっちゃいから」
壊れる!?壊れるモノなの!?これ!怖いからやめてよ!
「……やっぱり、ダメ?」
「いや、いいですよ」
この流れでいいのかよ。剣君、やっぱり変だよ。
「俺、ロリコンなので」
……?
「ん?」
「先輩のこと、結構前から好きでしたし。ずっと自分の性癖について悩んでたんですけど、先輩ならロリコンでもいいかなって」
何を急に幸せマックスな嬉し恥ずかしい事を言っちゃってくれてるんですか?この男は。
「よ、幼女が好きなの?」
「いいえ、自分の娘だったら溺愛するでしょうけど他人のガキは別に好きじゃないです」
「じゃあロリコンじゃないんじゃないの?」
「でも、俺は先輩の中身と同じくらい外見も好きでしたから。結論だけ見ればそうなるかと」
……きゅう。
「それでいいですか?」
「う、うん」
冷静に考えたら、セクシーな大人の女に魅了されないというメリット何じゃないだろうか。犯罪的な匂いばかりを気にして「私を好きになる人は〜」なんて言ってたけど。間違ってたのかもしれない。
……って、自分に嘘をつく理由ばっかり探してる。私、やっぱり剣君の事が好きみたいだ。
「ところで、走れば間に合った終電がマジになくなりましたよ。先輩のせいで」
「え、エッチしたいの?」
「いや、とりあえず居酒屋に入りましょうよ。先輩が年齢確認されたら奢り、されなかったら俺が奢りで」
「絶対負けるじゃん」
しかし、意外にも私は負けなかった。
ちょっとくらい大人っぽく、高めの居酒屋を選んで奢ってやろうとすればよかったと後悔した。
その次、コンビニでお酒を買おうとしたら年齢確認されて私が奢ることになった。