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最悪の終わり

 最初からずっと、死にたいと思っていた。



 世界から逃げたい。自分は誰とも関わりたくないのに、誰かに愛されたいと思う自分が心の底から気持ち悪くて仕方ない。



 認められたいのに動かかないで、人を妬んで苦しい気持ちと空っぽな自分に、形容する言葉が見つからない程の嫌悪感を抱いてしまう。気にしないフリをしても、目の前の世界がスマホの中にしかないから。狭い私の常識が。



 ……言葉、思い浮かばない。



 みんなが、私を追い詰めてる気がする。被害妄想だと思ってる。私が欲しかったモノを持ってる子がいる、私がやりたかったことをやってる子がいる。私が送りたかった青春を送ってる子がいる。



 そこに私がいないのはどうして?



 見なければいいのに、見なければいいのに、見なければいいのに。



 きっと、私はこの世界で一番醜い。他の人と比べられるくらい、他の人を知っているワケでもないのに。それでも自分が一番醜いだなんて、思い込みだって事くらい分かってる。



 けれど、頭で分かっていても心が納得してくれない。



 一番醜い私がいなくなった私の世界で、ならば次に醜い人は一体誰?そんな事を考えて、私はまたスマホを手に取った。



『次は成功するといいね、おつかれさま』



 彼からラインが来ていた。『うん』と短く返信しても既読はつかない。彼への返事、すべて『うん』って。気にしてくれてるのに、つっけんどんな態度でまた自分を嫌いになる。



 私が何を言っても嫌な言葉になっちゃうから、素っ気なく返してるのがバレてたらどうしよう。私みたいな女に好かれているって知って、迷惑だって思ったらどうしよう。



 ……既読が付いた。鏡越しに見つめ合ってる。



『何かあったら教えてくれよ、力になるから』



 スマホを閉じて、ベッドの隙間に体を挟む。体がダルくて仕方ない。目を閉じたら、頼んでもないのに明日がやってくる。いっそ、ずっと起きられなければいいのに。



 どうしようもなくなっちゃえばいいのに、そしたら「仕方ない」って諦められるのに。まだ、自分がどうしようもあっちゃうところにいるから、何かしなくちゃいけないのに。



 どんどん、嫌いになっていくのに。



「……どうしようもなくなっちゃえばいいのに」



 私は、彼に『おやすみ』と返事をした。そして、歯を磨いて部屋を掃除して。きっと、その後に片付ける人が困っちゃうから。いなくなったあとに嫌われると、きっと家族に迷惑がかかっちゃうから。



 ボヤケて前も見えないけど、彼だけは諦められなかったけど、何一つ終わらせられなかったけど。



 猫ちゃん、飼ってみたかったな。もう一回、お風呂に入っておこう。髪の毛を切った。伸ばしっぱなしだったから、ジョキジョキって。排水溝に、前髪と後ろ髪と。



 目が隠れていなくても、下しか見れないから変わらない。狭いから。私、頭悪いし、何も知らない。みんなが当たり前にできる事、私だけ出来ないから。



 あぁ。



 ……部屋を出た鍵は掛けなかった。



 下の道を歩いて歩いて駅の前まで来た、頭が、軽くて、涼しくて、前、見えない、けど。でもちょっとだけみえる。まえにある、ひとのあしもとくらい、ちょっとだけ。



 ぽつぽつ。ひとつ。



「教えてくれたから来たよ」



 いってとつぜん抱きしめられた。



 あれだけ私を苦しめた最悪は、なんの前触れもなく終わった。

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― 新着の感想 ―
[一言] それが求めるものであったなら、それを得られたというのはやはり幸せと呼んでいいのかな。 彼が慈悲深くあったことを祈って。
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