八竜の息子
「ラミアたん!」
「………ただいま戻りました、お父様」
ラミアはうつむき加減で答える。
ラミアたん? あんた竜王だろ。
それに人間世界では神様のように扱われているはずだ。それが……
「ラミアたん! なんで何ヶ月も帰ってきてくれないの! あっ、お見合い決まったからね。相手は……」
「お父様、そのラミアたんというのは止めて下さいと申し上げているのに……。仮にも竜王ですよ!」
おおーー、あのラミアが正論を述べている。
「それに私はお見合いはしません! どうせ私より弱い、へなちょこでしょう。後、紹介しますね。私のご主人様のケイン様です」
「ご主人様ーー!?」
ゴゴゴゴゴゴ
竜王はその鋭い眼光で俺を睨みつける。
「ケインとやら、貴様ラミアのご主人様だと!? 一体どういう事かのう?」
「ご主人様はご主人様です!」
「ラミアたんはちょっと黙ってなさい! さあ、ケイン!」
うーん、まあ、なるようになれだ!
「はい、私は今、ケイン帝国を建国し、世界征服を目指しております。ラミアにはその手伝いと言うかサポートをしてもらって大変助かっております」
「ぐぬぬぬ………竜王国アデレードの姫が人間世界の王の手伝いだと」
「あら、あなた、良いじゃありませんか、ラミアの見聞も広まるでしょうし。誰かのサポートってお転婆のラミアになかった進歩ではありませんか?」
「うぬぬぬ………」
これは感情論だからたぶん、今すぐは飲み込んで、もらえなさそうだな。
「認めぬーー認めぬぞ! ワシのかわいいラミアを従者だと! 認めぬ!」
「あらあら、どうしましょうかねー。」
うーん、どうしようもないんじゃないかな。
「お父様! ご主人様は私より強いです! 私のご主人様にたるや相応しい方です!」
「なんだと!? お前より強い? ほう……」
うん、少し竜王の俺を見る目が変わったか?
確か竜族の世界では強さがすべての判断基準だったはず。
「あら、ケインさんお強いですねー。ほら、あなたあの子の事、頼んでみたら?」
「あの子? ああ、ブリストルの小倅の事か」
なんだろう………ちょっと面倒くさい話なんじゃないだろうか?
「ケインよ一つ頼まれてくれるか? その頼みを聞いてくれたら………ラミアたんのご主人様というのを認めるわけではないが! 認めるわけではないが! ………黙認してやろう」
「あの子とは一体誰の事なのでしょう? ブリストルという方についても」
俺は竜王から一通りの説明を受け了承した。
「分かりました。俺にできる事があればできるだけの事はするとお約束しましょう」
「おお、そうか! これでうまくいけば元八竜のブリストルも浮かばれるのう……」
「ご主人様なら大丈夫ですわ!」
こうして俺は竜王国から一つの依頼を引き受け、人間世界に戻る事になった。
「元八竜の息子ですか。しかも、人間界からの捨て子の」
帝国に戻り、セバスチャンに相談を行っている。
元八竜ブリストル。
八竜の中でも筆頭といえるような実力者だったらしいが高齢の為、最近亡くなったらしい。
「そうなんだよ。その子まだ10代らしいんだけど、現時点で八竜に並ぶぐらいの強さがあるらしいんだよね」
「なんと、人間ですよね?」
人間の子供で八竜に匹敵するなど通常ありえない。通常は。
「うん、なんか竜の血を血分けしてみたら適合すごかったみたいで。まあそのブリストルって竜にも鍛えられてはいたらしいんだけど」
「もしかしたら伝説の竜騎士でしょうか?」
竜騎士とは伝説上の竜のごとき強い人間で、肉体の強さが人間のそれではなく竜に近かったという伝承が残っている。
竜に乗り、竜と共に空を駆け、世界中で暴れまわり、世界最強の名をほしいままにしていたらしい。
「うん、たぶんそうなんじゃないかっていうのが竜王国の見解らしい」
「だとしたら子供とはいえ、非常に厄介な相手ですね。その子は今、どこにいるのでしょう?」
「ヤーバラ王国、そこの盗賊団に所属しているらしい」
ヤーバラ王国。
通称混在国家。
人族、獣人族が混在しているという。
ケイン帝国からは国境を挟み南西方向にある国家だった。
「盗賊団……どこの盗賊団でしょう?」
「ジルベルト盗賊団、にいるらしいが、その辺りははっきりとは分かっていないらしい」
「なぜ盗賊に?」
そう、なぜ盗賊に?
この問いについては元八竜ブリストルが息子、イネスの物語について語るのがよいだろう。





