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卒業式まで6日

「もうそろそろ起きなー。」


お母さんの声で起こされる朝。


私は眠い目を擦りスマホで時間を確認する。


もう十一時半かあ…。


さすがに寝過ぎたなあと思い、布団からのそのそと脱出する。


今日は日曜日。卒業前最後の休日。


卒業式のために友達に手紙でも書こうと考えていた。


私はリビングに行き、お母さんが作ってくれたお昼ご飯を食べ、自分の部屋で黙々と手紙を書いた。


同じ大学に通うことになる友達はいない。顔見知りならいるけど、同じ大学と知って初めて話した程度の人だ。


もう、本当にこんな毎日がなくなっちゃうんだな。壁に貼ってあるたくさんの写真を見て思う。


友達といる時間が好きでだった。ふざけあって笑ったり、たまには人の恋の話を聞いてドキドキしたり。


私は高校生活で恋愛に縁がなかった。全く男子と関わらなかったわけではないけど、なんとなく考えてることが違いそうでわざわざ話そうと思わなかった。


なのに、昨日、何かが変わった。


自分があんなこと言うなんて思ってなかったし、自分があんなこと思ってるとは思わなかった。


キャラじゃない。


確かに、私は友達関係に悩むことが多かった。とても好きだけど、余計なことをいちいち考えて接してしまうところがあった。


嫌われたくない。


いつもそう思っていて、思っていることを言えないこともあった。私はみんなの思う通り笑っていればいいんだなと思っていた。


だから、夢だってずっと隠している。


私のずっと叶えたい夢。


気づいたら窓の外は暗くなり、私はお風呂に入り、ご飯を食べ、スマホで動画を見て過ごしていた。


いつも通りで、きっとこのまま変わらない夜。


なんだか、誰かと話したくなった。


きっと、心の中にあること昨日たまたま話しちゃったせいだ。


留伽のせいだ。


だって今日、こんなにも心の隅っこにずっと顔が思い浮かぶ。


昨日の夕焼けが頭から離れない。


私は馬鹿みたいだと思いながら布団に入ろうとした。


すると、急にスマホが鳴り出した。


メッセージかと思うと、スマホの音は止まず、電話だと気付く。


この時間に電話なんて誰だ…?


私はスマホに手を伸ばすと、画面には留伽の文字があった。


あ、昨日、連絡先交換したっけ。


でももう、十一時だ。何も言わずに電話は失礼じゃない?私は少しイライラしながら電話に出た。


「お、出た。」


耳の近くで留伽の声がした。


電話なんか普段しない私は少しだけ体が固まった。


「なに?何も言わずに電話とかさ失礼じゃ…。」


「電話だと声近くてちょっと緊張するな。」


私の声を遮って留伽が喋る。


なんでそうゆうこと普通に言うかな。苦手ポイントが貯まる。


「電話した原因は未羽だからなー。」


「え?私なんかした?」


留伽のペースに巻き込まれ、もう電話の声に慣れてきた。


「青春とは。」


留伽は少し強調して言った。


「一日中考えたんだけど、今の俺なりの答えが出たんだ。」


私は驚いた。


「なんで?」


「え?」


「なんで、そんなこと一日中考えてたの?」


私は自分のちょっとした言葉を受け止めてくれていて、少し嬉しかった。


「未羽が聞くから。やっぱ、これから全てを見せてく人材としては相手の疑問にも真剣にと思って。」


留伽は真面目に続ける。


「それでさ、青春の話なんだけど。まずさ、夜ってなんかドキドキしない?」


「夜?関係なくない?」


留伽のペースに巻き込まれてると思いながらも答える。


「いいから。ドキドキしない?みんなが寝てるのに俺は起きてるぞ、とか。ちょっと夜更かしして明日は起きれるかなとか。たまには、あいつは何してるかな?とか考えちゃったりさ。」


私はなぜか最後の例えで心がちくりとした。


「うん。するかもね。」


「そうゆう、夜になると何とも言えないドキドキを日常で感じたり。それが一つ目。」


留伽は自分の考えを話すのが楽しそうだった。


「そんな夜よりもドキドキすんだ青春は。真っ昼間なのに楽しくてドキドキすることばっかだろ?」


「うん、そうだね。」


「そうゆうのって魔法みたいじゃない?魔法をかけられてんだよ、俺たち。」


留伽は楽しそうに話し続けた。


「だからな、俺は、青春は魔法をかけられた夜みたいなものなんだと思う。」


留伽は話切ったというように、息をついた。


「すごい、素敵だと思う。」


私は素直に思ったことを言った。


「馬鹿にしないんだ?」


「なんで馬鹿にするの?」


留伽はヘラヘラしていた。


「未羽でよかったわ。」


私は言っていることがわからなかった。


まあ、確かに少しロマンチストなんだとかは思ったけど。


「俺、歌を歌いたいんだ。」


また急に留伽は違う話を始めた。


「うん、軽音部だもんね?」


「違うんだ、本気なんだ。まだまだ自分じゃ足りない。」


「うん。」


でも、私は留伽の話を聞きたかった。


「自分で歌詞を作って曲をつけてさ、何かを変えたいんだ。何かはわからないけど、俺が変われた歌で、俺も何かを変えたいんだ。」


留伽の声は真っ直ぐで目の前にいなくてよかったなと思った。


私には眩しくてきっと目を逸らしちゃうから。


「私も見たいよ。そんな留伽を。」


留伽は少し恥ずかしそうに笑った。


「初めて話したわ、こんなん。恥ずかし。てか、こうゆう時は頑張れとか言うもんじゃないの?なんだよ、見たいって。余計恥ずかしい。」


留伽はいつもより早口だった。


「私はまだまだ留伽のこと知らないけど、頑張る人なんだろうなと思うから、自分の感想を言おうかなって。」


間違えたこと言ったかなと考えていると留伽はまた笑っていた。


「やっぱり、未羽でよかった。」


どうゆう意味だろう。


留伽は掴めない。急に違う話をしたり真剣になったり、笑ったり。でも、私なんかより何倍もすごい、すごい人なんだと思った。


昨日、似てるななんて思った自分が恥ずかしくなった。


私たちはその後、しばらく話し、気付いたら夜中の1時をまわっていた。


二人で寝坊しちゃうと焦りながら、「また明日。」と言って電話を切った。


私は電話を切った後もなかなか寝られず、青春について考えた。


"魔法をかけられた夜"


やっぱり、そんな感じだなと思う頃には眠りについていた。

読んでくださり、ありがとうございます

毎日投稿します

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