98話 地獄の鬼ごっこ
高遠城付近に、ヘリコプターが接近している。
この時代でヘリコプターに乗れる奴はただ1人。
我が妹、奈々だ。
『えー、高校を卒業せずに失踪したバカ野郎に告ぐ。これより、地獄の鬼ごっこを開始する。日が沈むまでにバカ野郎が捕まらなければバカ野郎の勝ち。バカ野郎が捕まったら、地獄の罰ゲームだ。それでは、開始。』
ヤバイ、逃げよう。
俺は掛け軸の後ろにある隠し倉庫に隠れた。
「どこにいる?」
奈々の声が聞こえる。
バーカ、すぐ側にいる事が分からんとは。
てか、奈々だって中学卒業する前にロケットランチャー発明したじゃねえか。
バリバリ犯罪者が俺に説教するなよ。
「あ~、も~、全然分からない・・・」
ざまあみろ。
「訳無いじゃん。」
へ?
「あれれ~、この掛け軸何か怪しいなあ。よおし、確認してみよう。」
奈々は相変わらずウザい声で言う。
「見~つけた!」
奈々は隠し扉を開け、俺の方にどんどん近づいて来る。
「罰ゲームは、これを飲む事だ。」
ん?
トマトジュース?
バカめ、俺はトマトジュース克服したんだ。
舐めるなよ。
俺はトマトジュースを飲み始めた。
「ゴクゴク・・・おえええええっ。」
俺はトマトジュースを吐いた。
なぜか死ぬほど辛い。
舌がヒリヒリ痛む。
「痛いーっ。これもしかしてデスソース!?奈々、貴様っ。」
「引っかかったわね。まあ、君にしては上出来だよ。」
ウザッ。
「もっと飲め。」
奈々は俺の顔にデスソースをかけた。
目にデスソースが入り、激痛が走る。
「ぎえっぴーっ。」
「はは、ぎえっぴーだって。日本語大丈夫?」
俺はキレて、奈々の胸ぐらを掴み、デスソースを口に入れた。
「やめろ!」
「やめねえよ。俺の痛みを忠実に再現してやるからな、この犯罪者。」
「ロケットランチャーを作ったのは自分の為よ。人を殺す為じゃ無い。」
「理由がどうあれ、法律違反は見過ごせないぞ、奈々。」
「ここでは人を殺しても裁かれないんでしょ。」
ちっ、口うるさい妹だな、おい。
俺は奈々の頭にげんこつを入れた。
「妹に対してその態度は何だっ。」
「黙れ。うるさい。」
俺は奈々を突き飛ばし、抜刀した。
「え、冗談、よね?」
冗談などでは無い。
俺は本気だ。
本気で怒っている。
調子に乗りやがって。
俺はお前のせいで全ての愛情を奪われたんだ。
学校の宿題をしている時、ちょっかい出しやがって。
勉強しろよ、勉強。
母親に甘えときながら、裏では悪口ばっか言ってるし。
愚痴を言うなら正々堂々と本人の前で言えや。
「やめてよ。」
奈々は恐怖に怯えきった顔で言う。
「今更無駄だ。さらば、妹よ。」
俺は刀を振り下ろした。
デスソースは、世界で一番辛いソースです。
その名の通り、飲んだら死にます(死なないけどかなり致命傷)。
よい子のみんなはマネしないでね(笑)