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我らは信長家臣団  作者: 大和屋
天下統一編
89/178

89話 俺と茶々

目を覚ますと、俺の視界に飛び込んできたのは、茶々の顔だった。

「おバカっ、なぜあのような場所に立つのです?風邪を引くに決まっているではありませんか?」

俺は右手を頬に当てた。

いつもより熱い。

鼻が詰まっているし、咳も止まらない。

「心配するでしょう。体調管理には気を付けて下さい。」

「ああ、すまん。ゲホッゲホッ・・・」

俺は激しく咳き込んだ。

「安静にしてください。風邪は風邪でも、こじらせたら大変ですから。私の祖父・織田信秀も風邪をこじらせた事が原因で死にました。だからっ、あなた様は我が祖父の二の舞とならぬようっ、体調にはお気を付けを・・・」

俺の顔に茶々の涙が落ちてくる。

まるで雨の降り始めのように、茶々は泣く。

「大丈夫だって、ゲホッゲホッ。」

俺は大丈夫だと言い張るが、本当は大丈夫じゃない。

喉が焼けるように痛い。

頭が重い。

息をするたびに喉が痛む。

「無理をしないでくださいっ、あなたはっ、私の夫っ・・・だからっ、絶対にっ、死んじゃっ・・・ダメっ。」

茶々が泣いているのは初めて見た。

妊娠中なのに、俺が側に居てあげられず、何度寂しい思いをしただろうか。

勝が誕生しても、その功績を褒めずに、ただ政治の事だけ考えていた。

それなのに、茶々は一度も寂しいとは言わなかった。

一度も泣いていなかった。

そんな茶々が、大声で泣いている。

「大丈夫だって。」

俺は無理をして言う。

「これ、私が握ったおにぎりです。夜までに食べなければ、扇で頬を叩きますから。」

茶々はそう言って出て行った。

俺は茶々が握ったおにぎりを一口食べた。

「・・・」

俺は無言で、おにぎりにかぶりつく。

「・・・」

おいしい。

おそらく、この16年の人生で、間違いなく一番おいしいおにぎりだったと思う。


 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 茶々視点 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


私は涙を堪えながら、孫子の兵法を読む。

ページをめくる事に、あの人への怒りを、本にぶつけた。

涙のせいで、文字がぼやける。

私は怒りまかせに、孫子の兵法書を投げ捨てた。

それでも怒りは修まらなかった。

私は宿から飛び出し、道端に咲いている花をむしりはじめた。

花は悪くない。

でも、怒りが修まらないのだ。

私の体は、どうやら限界のようだ。


 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 俺視点 ◆◆◆◆


「茶々がいなくなった?」

俺は苦しい息の中、言う。

「はい。部屋で孫子の兵法書をお読みになられ、その後、行方が分からなくなりました。」

俺は立ち上がった。

体が悲鳴を上げる。

「なぜ見張っておかなかった?命令しておいたはずだ。」

俺は怒りに声を震わせながら聞いた。

「御方様はおとなしい方なので、逃げ出す事も無いかと・・・」

俺は足軽の髪を掴み、引きずり回した。

そして、木に縛り付けた。

「役立たず。」

俺は悲鳴を上げる体を引きずり、茶々を捜し始めた。

この小説がもしアニメ化された時、使いたいBGM

→ペコとの出会い・ペコとの約束

全てドラ○もんの映画で使用されたBGMです。

ユーチューブで検索すれば分かります。

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