87話 茶々の名案
俺は高遠に帰還すると、戦の準備を整えた。
大量の火薬や鉄砲が、城内に運ばれる。
「次は、どこの城を攻められるのですか?」
茶々が聞いてきた。
「根城っていう変な名前の城だよ。平山城と言って、平野にある山に建つ城だよ。」
俺は茶々に説明した。
「大将は?」
「もちろん俺。」
「・・・そうですか。私に任せて頂ければよろしいのに。」
「う~ん。全部任せる事はできないけど、副大将なら許可するよ。」
「分かりました。副大将として、奮闘します。」
茶々も遂に戦に出るのか。
「どれほどの兵を連れて出陣をするのですか?」
「6万人かな?兵が多いと安心だし。」
「・・・御言葉ですが、そのような大軍は必要無いと思います。」
「え、何で?」
「私が南部の領地に放った忍者によると、根城は2千人ほどの兵しかおりません。それなのに6万もの兵を用意したら、兵糧の無駄遣いです。それに、根城の兵たちは、ほとんどが農兵で、大滝家の足軽には到底及ばない物と断定できます。」
茶々、見事だ。
予め忍者を放っておくとはあっぱれ。
「分かった。1万人ほどにしておこう。茶々には、約4千の兵を与えよう。存分に暴れていいぞ。ただ、命令には背くなよ。」
「はい、心得ております。」
茶々は頷いた。
「兵が集まり次第、出陣だ。それまで、蘭丸や政宗と稽古をして腕を磨け。」
「はい、分かりました。」
茶々は江のようにはならないだろう。
多分だけど・・・
◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 10日後 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆
「出陣!!」
俺は1万の兵を、俺と茶々の部隊に分けて出陣した。
正午には群馬県、いや、上野国の国境を越えていた。
俺は遠くに、宿を見つけた。
「今日はあそこに泊まろう。」
俺は茶々に言う。
「かしこまりました。」
茶々は頷いた。
俺たちが泊まる宿は、なかなか大きくて、1万人の兵もすっぽり納まった。
ゲームもテレビも無いので、ひたすら酒を飲んでいた。
「そう言えば、勝は大丈夫かな?」
「側室たちに勝を頼むと言いましたので、大丈夫です。」
「そっか。」
俺は酒を飲み干し、茶々と作戦会議を始めた。
兵の数では俺たちの方が断然上だけど、そうやって油断していたら江のようになってしまう。
「良い案を思い付きました。まず、私が最初に根城の近くに布陣します。そして、陣中で宴会を開くのです。根城の者たちは農兵がほとんど。団結力に欠けているはずです。きっと、私たちの挑発に乗ってくれるでしょう。そして、城が留守になった間に東様が根城に入城するのです。農兵たちは慌てて城に戻るでしょうから、そこで東様が敵を殲滅なさってください。」
「分かった。」
茶々、俺の軍師になっておくれ。
「名案だ、茶々。褒美として何かやろう。」
「・・・私に次女ができたら、次女を帝の養女にしたいのです。」
茶々が結構とんでもない事を言った。
「まあ、帝が許したらな。」
俺はそう答えるしか無かった。
数年後、俺の次女は帝の養女となり、公家に嫁いだ。
その事により、俺の朝廷での発言力はナンバー2となった。
ただ、今の俺は知るはずも無かった。