8話 家康という狸オヤジ
俺は家臣を持ったので、明智光秀の側近で、本能寺でお坊さんに斬られた斎藤利三の屋敷を与えられた。
家臣達への給金は全て信長様がはらってくれるらしい。
2000石は他の大名たちと比べれば大した石高ではないが、1万石から大名だと認められるのでそこそこだろう。
そんな石高を、俺は信長様から与えられたのだ。
すげーだろ、どう考えても。
「東様。」
三成だ。
「三成、どうした?」
「徳川家康殿が・・・」
「え?」
「どうかしましたか?」
家康と三成。これはちょっとまずい。
「いや、何でもない。とりあえず、広間で会おう。」
「ははっ。」
家康は信長様より八歳年下だから、おそらく四十一歳だろう。
「十六歳と聞きましたが、そうとは思えぬ出で立ちですのう。それに、胸を火縄銃で撃たれても、死ななかったとか。」
「して、今回のご用件は。」
「羽柴秀吉殿を、毒殺してほしいのですが。」
来たぞ、野望の狸オヤジ。
俺は豊臣秀吉が好きだから、徳川家康はあんまりだ。
「ええ、かまいませんよ。」
ここはこう答えるしかない。
「ありがとうございます。」
家康は帰っていった。
三成が来た。
「申し訳ないのですが、盗み聞きしておりました。今は東様の家臣とは言え、今も秀吉様をしたっております。どうか、暗殺だけはご勘弁を。」
「三成、俺は暗殺などせぬ。逆に、家康を殺してやろうぞ。」
「はい。」
家康は、好きになれません。