72話 ハンバーグ
台所から、包丁の音がした。
しばらくすると匂ってきた、故郷の懐かしい匂い。
「できましたよ。」
小松が入って来た。
「こ、これは・・・」
俺は自分の目を疑った。
こ、これはっ。
どこからどう見ても、ハンバーグではないかっ。
「見た事も食べた事もない料理だな。」
「東様の妹君である、奈々様が教えてくれたのです。」
「妹?そなた、妹と一緒にこの時代へ来たのか?」
「違います。奈々は、時間警察庁という組織に入り、時間を移動する機械を使ってここへ来た、というわけです。」
「ふむ。まあそんな話はどうでも良い。小松殿の料理、ありがたく頂かせて思う。」
信長様はハンバーグを一口食べた。
「美味い!光秀が好んでいた京の料理よりうまいぞ!これほど贅沢な料理、もしも城下で取引したら、1000文で取引できるだろう。」
えっと、100文が1万円だから、10万円か。そんな値段ではないのだが・・・
「信長様。これはハンバーグと言いまして、俺の時代での値打ちは1000円ほどですよ。」
「せ、せんえん?」
「あっ、えっと、10文の事です。」
「何っ、そのような値打ちなのかっ。こんなに美味いのにっ。」
「まあ、大惨事が無い限りは、ハンバーグはいつでも手に入りますからね。後、財力さえあれば。」
「そなたの時代はどれほど豊かなのだ?して、原材料は?」
「肉です。」
「・・・この時代では肉は禁止されておるのだぞ。そなた・・・」
・・・
「使えるぞっ、食肉禁止令解除の好機だっ!東、このハンバーグとやらを帝へ献上せよ。」
「は、はい。」
俺はそう答えるしかなかった。
果たして、天皇はハンバーグ如きで意思を変えてくれるのだろうか。
天皇はそんなに、意思が変わりやすい人なのだろうか。
私には、分からない(by:野口英世)。
ぷぷっ。