64話 織田信長とテキーラ
「東様、あなた様がお持ちになられている物は何ですか?」
2020年の東京から帰ってきた俺。
庭に立っていると、茶々がそう問いかけてきた。
「ああ。俺の時代に売っている品物だ。入浴剤とか肌がめっちゃきれいになるし、健康にも良いぞ。」
「お心遣い、ありがとうございます。ありがたく、使わせていただきます。」
茶々は入浴剤が気に入ったらしい。
「これは、何ですか?」
茶々はテキーラを器に注いだ。
「ああ、ダメ!」
俺は叫んだ。
「知らないの?妊娠中にお酒飲んじゃダメ!」
「ああ、これお酒なのですか。分かりました。」
俺は茶々が注いだテキーラを一気飲みした。
「・・・何とか飲みきった。よし、テキーラは信長様に献上しよう。」
俺はテキーラのビンにフタをすると、それを持って安土城に登城した。
「東、何の用じゃ。」
信長様は爪を切っていた。
「お見せしたい物が。」
俺はそう言って、テキーラを渡した。
「これは飲む物か。」
信長様はフタを開けると、テキーラを一気飲みした。
「ああっ、そんな一気に・・・」
俺は言葉を失った。
「うまい!これは未来の酒か。」
「は、はい。」
俺は驚いた。信長様は、酒に強いというわけでは無かったはず。
「それでは、帰らせて頂きます。」
俺は部屋から出ようとした。
「待て。」
先程の愉快な声とは違い、重い声で信長様は言った。
「何でしょうか?」
「そなた、側室を迎えたそうな。」
信長様は俺を睨む。
俺は気づけば、冷や汗をかいていた。
続く・・・