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我らは信長家臣団  作者: 大和屋
輪廻編
174/178

174話 森蘭丸の遺志はここにある

安土城がある安土山は、標高約200メートルの小さな山だ。

だから登山も楽だろうと思いきや、階段の段差が大きく、雨の日には滑って転ぶ事もあるので、極めて危険だ。

茶々は怪我の治療の為大和にいるので、ぼっちで登山している。

数分ほど歩くと、前方に、森蘭丸邸が見えてきた。

懐かしい記憶が脳内で蘇る。

蘭丸は既に故人だ。

誰もいないはずだから、少し蘭丸邸で休憩しよう。



主人がいなくなった屋敷は、ひっそりと静かだった。

蘭丸の遺品が綺麗に整頓されていて、誰かが足を運んだ形跡もない。

まるで、この屋敷が蘭丸の遺志を継ごうとしているようだ。

この屋敷は生き物ではない。

喜びも、怒りも、悲しみも感じない無機物なので、蘭丸の遺志を継ぐ事などできないのだが、そう思わずにはいられなかった。

森蘭丸の遺志は、ここにある。



本丸に辿り着くと、色鮮やかな天主が輝いて見えた。

「大滝東様ですね。お待ちしておりました。信長様の部屋までの案内を私が務めさせていただきます。」

「名は?」

「森坊丸と申します。」

森坊丸。

森蘭丸、力丸の弟。

本来ならば、本能寺の変で落命するはずだった者。

「兄の・・・蘭丸の最期を覚えていますか?」

「覚えている。とても立派な最期だった。少しでも俺の役に立とうとして、朝鮮軍の大将と交戦し、戦死した。」

「蘭丸の死は、役に立ちましたか?」

「役に立った。朝鮮を手に入れた後も蘭丸が生きていたら、信濃の半分を与えるつもりだった。」

「そうですか。」

自分の兄の死に意味があったと知った少年は、寂しそうに笑う。


案内された部屋は、綺麗な花が飾ってある素晴らしい部屋だった。

「久しいな、東。」

「久しぶりですね。蘭が毒を盛っているという事に気がついたのはいつですか。」

「毒を食らってから数日ほどしてからだ。案ずるな。わしは既に名医がつくった解毒剤を飲んでいる。」

「そうですか。体調に問題はありますか?」

「問題はない。」

噓ではないだろう。

茶々から教えてもらった『噓見破りの術』を使えば、本当か噓なのかが分かる。

「この度は、蘭が天下を乱すような行為をしてしまい、本当にすみません。」

「かまわぬ。お前が悪いのではない。わしは最初、蘭を恨んだ。憎んだ。だが、わしの子・信孝を

救ってくれた事に関しては感謝しかない。」

ああ、そうか。

蘭がまだ畠だった頃、毒に苦しむ信孝様を蘭が救った。

信長様は、その事を感謝しているのだろう。

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