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我らは信長家臣団  作者: 大和屋
輪廻編
171/178

171話 浪人たちの命と自分の命

各藩の忍びたちからの情報によると、蘭は大和(現在の奈良県)にいるらしい。

浪人たちと手を組み、いずれ俺を殺すつもりなのだろう。

哀れな女だ。

大切な人を何人も失い、上杉家の足軽たちの暴力に悩まされ、命からがら逃げて俺の側室になっても幸せにはなれず、自分の両親がつけてくれた名前すら大切にできない。

親の愛情を知らずに育った可愛そうな奴だ。

とはいえ、敵は敵。

どのような事情があったとしても、信長様を殺した罪は消えない。

「今から大和に向かう。武装しろ。」

甲冑を身に着け、重臣たちに指示を出す。

「私も行きます。」

長い髪を束ねた茶々が、真剣な表情で申し出て来た。

「ダメだ。お前は勝を・・・」

「お願いです!必ずや伯父上の仇を取ってみせます!ですから!」

「分かった。許可する。」

茶々は、こんなにしつこい女ではなかったはず。

きっと、伯父を亡くして、今までに感じた事の無い怒りを感じたのだろう。

「出陣!」

西に馬を進める。

日は、既に西に傾いていた。



◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 蘭視点 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


予想は当たらなかった。

早い。早すぎる。

どうしてこんなに早く居場所がばれた?

これが大滝家の力なのか。

「蘭様、どうしますか?」

12歳ほどの少女が聞いてくる。

「どうするもこうするもあるか!全力で戦うしかないだろう!」

「私に考えがあります。」

「何だ、申してみよ。」

「大滝家が朝鮮の軍勢と戦った時、織田信長の姪・江は自爆する事で夫の仇を討ちました。ですから、私も自爆を・・・」

「馬鹿な事を言うな!お前はまだ12だろう?」

「蘭様も15ではありませんか。歳など関係ありません。私の父は浪人で、収入が無いのです。食べる物はもちろん、店から盗んで生き延びていました。こんな人生はもう嫌です。ですから、死なせてください。」

手を振り上げ、少女の頬を叩く。

「お前は命を何だと思っている!?世の中には、餓死がしする者も大勢居るんだぞ!生きる事が許された、数少ない命だ!親から貰った、大切な命だ!お前が死ねば悲しむ人は多い!だが、私の家族はもういない。すなわち、私が死んでも悲しむ者はいない。だから、私が自爆して・・・」

「あなたが死ねば、私たちが悲しみます!」

ああ、こんな事になるなら仲間なんてつくるんじゃなかった。

私が死ぬ事で、関係のない人が悲しむなんて嫌だ。

誰も悲しまないよう、静かな死を迎えたい。

今まで、自分の価値観に従って生きていたが、もういい。

「私は、お前たちの為に死にたい。」

姉さん、兄さん、ごめんなさい。

私、自分の命を大切にするっていう約束を守れなかった。

でも、私の命を差し出すだけで、浪人たち200人の命が守られるのならば・・・

たとえ約束を守れなかったとしても、浪人たちの命が守られるのならば・・・

私は死を選ぶ。

次回予告


大軍を率いる東は、まずは武力行使ではなく交渉に打って出た。

条件として、浪人たちを奴隷として大滝家に譲渡じょうとする事を提示した。

もちろん、蘭は断る。

東は悩んだ末、蘭と浪人たちを皆殺しにすると決める。

大量の火薬を用意した蘭は、ある事に気付き・・・


『俺は蘭を茶々に次いで2番目に好きだった。』

『私は東様が世界で一番大好きだった。』

『俺は信長様を殺した蘭が憎かった。」

『私は自分が苦しんでいる事に気が付かない東様が腹立たしかった。』


9月22日、公開(3000文字で完結を予定)

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