168話 男尊女卑
おかしい。
信長様の治療はもう終わったはずなのに、蘭がまだ帰ってきていない。
また人攫いに攫われたのか?
いや、それはない。
今回は護衛もつけたし、派手な服は控えるようにと口が酸っぱくなるほど言った。
だとすれば、自分の意思でここに戻らないと決めたのか?
どういうつもりなのだろう。
「蘭丸、お前はどう考える?」
「何をですか?」
「蘭の事だ。」
「・・・大名の側室という立場でありながら、大滝家の領地である信濃に戻らぬとは言語道断。厳しく処罰すべきだと思います。」
「そうか。」
現代では、殆ど男女平等だが、戦国時代となるとそうはいかない。
男尊女卑が激しい時代だ。
故に、男性が自分の意思で離婚する事は簡単だが、女性が自分の意思で離婚する事は不可能。
もし女性が一方的に離婚したと宣言すれば、極刑は間違いない。
その思想は、蘭丸にも受け継がれている。
安土城が爆破されてから1ヵ月が経過した。
やはり蘭は戻ってこない。
昨日、織田家から全国の大名に向けて、命令が下された。
自分の領地の囚人を織田家に譲渡するようにという命令だ。
安土城を再建するには莫大な出費を余儀なくされる。
現代のお金でいうと600億円。
1兆円で戦車が1500台買えるから、想像できないほどの大金だ。
囚人ならば、給金なしでも文句は言えないだろう。
罰を与えるのは当然なのだから。