162話 幸せになれ
死んだ江の遺品整理をする。
朝鮮を手に入れた後、安土城にて盛大な葬儀が行われたが、遺品整理はできなかった。
気力がなかったのだ。
「これはどうします?」
整理を手伝う下女が、金色の簪を差し出してくる。
「そうだな。簪などの江の所有物は、まとめて庭に埋める。」
「かしこまりました。」
中には江の事を忘れないようにと、遺品整理に反対する家臣もいたが、政宗が説得して整理は行われた。
「ん?」
書物を見つけた。
江は読書好きではなかったはずだが。
孫子の兵法か?
めくって読んでみる。
「!」
どうやらこれは、江の日記だ。
読み終わると、涙がこぼれた。
この日記を読んで、いくつか分かった事がある。
最初は俺に恋していたという事、蘭丸の訃報を聞いた時は本当に悲しくなかったという事、それでも後から実感が湧いて来て泣いてしまったという事。
涙を拭き、整理を続けた。
整理が終了したのは、午後になってから。
次女に会いに行こう。
「菊、よくやった!」
次女を抱きながら言う。
「名前は決めましたか?」
「うーん。」
次女の顔を眺める。
「!」
何となく、江の面影がある。
江→轟。
「轟だ。」
「ごう?江様に由来しているのですか?」
「ああ、そうだ。といっても、轟と書いて『ごう』と読む。」
「かしこまりました。」
江の分まで幸せになれよ、轟。