150話 復讐
蘭丸を殺したのは、朝鮮の王・宣祖である事が分かった。
俺は、必ず宣祖を討つ。
その為には、鬼にでも悪にでもなろうと思う。
再び朝鮮に挑む為、俺は茶々と江と共に安土城に入城した。
「長旅、ご苦労であった。さて、まずはどこから手を付けようか。」
と、信長様は自問自答をする。
「江、お前はどうだ?」
あの後、江は自室で泣き止まなかったそうだが、今は落ち着きを取り戻し、天下人の姪としての威厳を傷付けないように振舞っている。
「伯父上。私は、朝鮮に忍びを放ち、宣祖を毒殺するという事を考えているのですが。もちろん、毒見をしてもあまり意味がない遅効性の毒で。朝鮮の民からは、卑怯だと言われるでしょうけど。」
「そうだな。異議はないか?」
「ありません。」
「では、江の意見を採用する。今日の評定はこれで終わりだ。各自、好きにするが良い。」
俺は、悲しい事があると酒を求めるようになる性質なのだろうか。
ひたすら酒を飲み続ける。
「そんなに飲まないでくださいよ。」
得意の裁縫をしながら、茶々は言う。
「酒は体に悪いんですからね。長生きしたいなら、酒は控えてください。」
分かってる、そんな事は。
分かっていて飲んでいるのだ。
「ちょっと、聞いてます?」
「聞いてる。」
「もう飲まないでください。」
茶々は俺から瓢箪をひったくると、中身を全部捨ててしまった。
「ああ~、もったいない。信長様からもらった上等な酒なのに。」
「ほら、喉が渇いたなら、水でも飲めば良いのに。」
ひとりごとのように喋る茶々は、頬を膨らませている。
可愛い、と思って頬に手を伸ばすと、払いのけられた。
「触らないでくれます?」
あれれ?
茶々って意外とツンデレなのかな。
「とにかく、飲まないでくださいね。」
自分の着物を縫い終えると、茶々は俺の額に人差し指を突き立て、「めっ。」と言った。