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我らは信長家臣団  作者: 大和屋
朝鮮出兵編
148/178

148話 大切な人の死

蘭丸推しの人、手を挙げて。

ハンカチを用意する事をおすすめします。

翌日、日本軍は朝鮮軍と衝突した。

俺自身も、最前線で戦った。

大将が手本となって敵陣に突撃する事によって、味方の士気を上げようと思ったからだ。

別働隊が、本隊を奇襲する。

本隊が撤退していくのが分かる。

士気が低下した敵軍は次々に退いていった。

「逃がすものか、朝鮮軍は今ここで全滅させる!」

天下人の声が、戦場に響く。

「逃すな、皆の者!大将の首を取れ!」

配下に命令する。

三成が駆け寄ってくる。

「申し上げます!蘭丸殿、敵の総大将と戦い、深い傷を負わせるも、討ち死になされました!」

クラッカーの音が聞こえたような気がした。

その音と共に、俺の体は急に動かなくなった。

動きたいのに、動けない。

何だろう、この感情は?

悲しみ?

怒り?

いや、俺は何も感じていない。

怒りも、悲しみも、悔しさも。

頭の中に浮かぶのは、江の顔。

蘭丸が死んだことを話したら、江はどうするだろう?

俺を殴るかな?

自殺するかな?

いずれにしても、悲しむ事に違いないだろう。

まただ。

また、クラッカーの音が聞こえた。

その音が、脳内に響く。


「森蘭丸にございます。」

家臣に抜擢した時から、蘭丸は俺のお気に入りだった。

真面目だし、素直だし、賢いし。

だから、信長様も、江を蘭丸に嫁がせたのだろう。

俺は、江の幸せを奪わない為に、絶対に蘭丸を死なせないと決心していた。

なのに、俺は蘭丸を死なせた。無茶をさせた。

この罪は、償う事ができないほど大きい。


突然、体の中心部から何かが広がっていく。

怒りだ。

刀を握る。

怒りのあまり、力が入り過ぎている。

この17年の人生の中で、一番速い速度で走った。

敵陣へ突っ込む。

「殿!」

三成が慌てて追いかけてくる。

どこだ?

敵の総大将は、どこだ?

懸命に探す。

そう簡単に見つけられない事は分かっている。

でも、総大将の首を取らなければ、蘭丸が奮戦した意味が分からなくなってしまう。

深い傷を負ったのならば、自らの足で逃げる事は不可能。

「お待ちくださいませ、殿!これ以上兵を死なせる訳にはいきませぬ!蘭丸殿と同じく、我らの兵たちにも家族がいます!蘭丸殿の為に、多くの人々が涙を流すことは、江様の望みではないはずです!」

「ちくしょう!!!!」

地面を拳で殴る。

「ちくしょうちくしょうちくしょう!!!!」

涙が出てくる。

敵はひたすら逃げていく。

大切な人の死を、初めて体験した。

どうして蘭丸が死ぬのだろう?

夢の中で、祖母ちゃんは江が死ぬと言ったはず。

蘭丸の死を知った江が自害するのか?

それは絶対に避けたい。


夕方、信長様が尋ねてきた。

「今回の戦は、激戦だったのう。して、蘭丸はどこじゃ?」

聞かないで欲しかったのに。

涙が溢れてくる。

「信長様・・・蘭丸は・・・蘭丸はっ・・・」

泣いているせいで、うまく喋れない。

「申し訳ございません信長様!申し訳ございません、申し訳ございません!蘭丸は、総大将の首を取ろうとして死んだのです!全部俺のせいです!俺が、蘭丸に無茶をしないようにと言っていたら、こんな事にはならなかったはずです!」

信長様は、俺の背中をさすってくれた。

「お前のせいではない。落ち着け。」

第六天魔王なんて噓だ。

信長様は優しいんだ。

改めて実感した。

ようやく落ち着いたのは、御前2時くらいだった。

俺が寝るのを見届けるまで、信長様は一度もあくびをしなかった。


さようなら、蘭丸。

今までありがとうね。

グスン。

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