146話 朝鮮出兵
昨日、織田家から全国の大名に、朝鮮出兵への助力を求める文が送られた。
大滝家も、例外ではない。
信長様は、最低でも1万人程度の軍を率いる事を条件にしている。
となると、莫大な出費を余儀なくされる。
「何を悩んでおられるのです?」
亀甲の着物を着た茶々が問いかけてくる。
「朝鮮出兵の件は、お前も知っているだろう?」
庭で舞う揚羽蝶を眺めながら、言った。
「ええ。」
「万単位の軍を動かすとなれば、当然金が必要になる。織田家の繁栄に尽くしたいのは言うまでもないが、金銭的に余裕がなくなるかもしれない。」
「・・・ならば、農民たちにの財産の一部を納めさせてはどうでしょうか?」
「いや、それはダメだ。」
なるべく、農民には負担をかけたくない。
「・・・私に任せてくださいな。」
何か、ひらめいたようだ。
それからしばらくは、茶々は部屋に籠もっていた。
食事も着替えも全部自室でやっていた。
唯一、茶々が姿を見せるのは、厠に行く時のみだった。
「東様、出来ました!」
茶々が差し出したのは、たくさんの着物だった.
七宝繋ぎに矢絣、菱の柄など、柄は様々だ。
「全部、私の手作りです。これを売れば、ある程度の利益が見込まれます。」
なるほど。
やはり、天下人の姪は裁縫が得意で、側室たちが絶賛していた。
「売るなんて、もったいない!私にください!」
と蘭。
「蘭様、これは朝鮮出兵の軍資金を稼ぐ為に作った物です。欲しいなら、朝鮮出兵が終了した後に。」
「む~。」
蘭が頬を膨らませる。
七宝繋ぎの着物は1000文(10万円)、矢絣の着物は900文(9万円)、菱の着物は3000文(30万円)で売れた。
「これだけですか。」
一生懸命作った着物を売って、その利益が約50万円。
俺は充分だと思うけど、茶々は落ち込んでいる。
「もっと、短期間で稼げる方法はないのでしょうか?」
「地道にやっていくしかない。俺も裁縫はできるから、側室たちや家臣にも手伝わせよう。」
翌日から、側室や家臣団を含む者たちが、自室に籠もって裁縫に集中した。
厠に行く時以外は、絶対に外に出なかった。
足が痺れたりしたけど、朝鮮出兵の為だと思って頑張った。