表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我らは信長家臣団  作者: 大和屋
朝鮮出兵編
144/178

144話 悲しき毒見役

体調が回復したので、松姫様に話しかけた。

「なぜ、このような事を?」

「・・・命令ですよ、信長様からの。」

命令?信長様の?

頭に大きなハテナマークが浮かぶ。

「これは、毒を見分ける事が出来るか出来ないかを試しているのです。ちなみに、このフグの毒で、佐々成政殿と柴田勝家殿が死にました。」

「ど、どうして試す必要が?」

「命を狙われる立場だというのに、毒を見分ける事が出来なければ論外です。」

「毒見役が見分けてくれるので、大丈夫だと思いますが?」

「可哀想ですよ、18歳の娘に毒見を任せるなんて。」

それは、江に言ってくれ。

「ですから、毒見役を解雇する事をお薦めします。いえ、命令します。織田信忠様の正室として。」

「かしこまりました。」

俺は、千鶴代に解雇する事を伝えた。

「嫌です。」

断られた。

普通に考えれば、解雇すると言って、黙って従う奴などいないだろう。

「退職金はいくらでもやる。だから・・・」

「そういう問題ではございません。毒見役でなくてもいいので、どうか私に仕事を・・・」

千鶴代は、急に黙った。

「どうした?」

「あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・」

千鶴代は、喉を押さえて苦しみ始めた。

「どうしたのだ?」

「・・・やっと・・・だ・・・やっと・・・死ねる・・・のだ・・・」

声がかすれている。

「あ・・・あ・・・東・・・様・・・あなたの・・・おかげで・・・私は・・・友人の・・・仇を・・・討てた・・・あ・・・あ・・・・・・・・」

千鶴代は、呼吸していない。

「あ・・・・が・・・う」

何を言っているのか分からない。

「もう1度、言え。」

「あり・・・とう。」

「もう1度!」

耳を、千鶴代の口に近づけた。

「ありが・・・とう。」

「!」

その言葉を言い終えた後、千鶴代は倒れた。

「分かっていたんですよ。」

ひとりごとのように喋り始めたのは、茶々だった。

「何が?」

「千鶴代が、最上家が滅んだ後に自殺する事は。」

仇を討つ事に成功したとしても、友人は戻ってこない。

永遠に。

だから千鶴代は、新しい友人を探すのではなく、一番仲が良かった友人とあの世で再会する事を選択したのだろう。

千鶴代の人生は、短かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ