135話 エイサー
沖縄県は、昔は日本ではなく琉球王国だった。
だから、本州とは少し違う文化がある。
その沖縄県の伝統芸能の1つにエイサーがある。
「踊りたくないのですか?」
秀吉殿が聞いてくる。
「エイサーを踊ります。」
「え、えいさあ?」
「琉球王国の伝統芸能の1つです。」
陣太鼓を借りて、エイサーを踊り始めた。
しばらくすると、岡崎城の下女たちが集まってきた。
そんなに珍しい踊りなのかな?
エイサーは小4の運動会で踊った事があるから、その曖昧な記憶を頼りに踊った。
「すごい!」
見物人から歓声が起こった。
「東様!それを祭りで披露すれば良いのです!」
秀吉殿が言う。
「ええ、そんなとんでもない。」
運動会を除いて、俺は大勢の観衆たちの前で踊るのは得意じゃないのだ。
「お願いでございまする。」
土下座された。
土下座されては断る訳にもいかないだろうから、承知した。
「茶々、待たせたな。」
部屋に戻ると、茶々は寝ていた。
疲れているようだし、そっとしておいてあげよう。
暇だし、エイサーの練習をしよう。
陣太鼓の代わりに手を叩きながら踊った。
太陽が西に沈むと、秀吉殿の下女が食堂に案内すると申し出てきた。
スヤスヤ眠っている茶々を起こして、食堂に向かった。
「本日の献立は、鮭の塩焼きと、三河味噌を使用した味噌汁と、牛の肉でございます。」
さっそく、肉を出すのか。
食肉禁止令を解除した甲斐があったな。
俺は塩分が濃い食べ物が大好きだから、鮭の塩焼きは大好物だ。
一口食べる。
うむ、うまい!
「東様、これは伊勢から取り寄せた鮭なのですが、どうでしょうか?」
「旨いです!」
思わず、大声を上げてしまった。
この鮭は伊勢湾で獲れたのか。
伊勢湾は魚が一番獲れると言っても過言ではない港だ。
その伊勢湾の近くにある尾張は、莫大な富が手に入る場所だった。
その尾張を治めていた信長様だからこそ、その莫大な富を武器に天下統一へ進めたのだろう。
一方、武田信玄が治めていた甲斐は、貧しい土地で、おまけに京都から遠いので、天下統一は難しいだろう。
運の良さでも信長様の圧倒的勝利だろう。
鮭を食べると、次に三河味噌を使用した味噌汁を飲んだ。
これもまた、味が濃い。
秀吉殿は、元は信長様の草履取りだった。
ある日、冬の寒い日に、信長様は秀吉殿が用意した草履を履いた。
なぜか温かいので、「尻に敷いていたな!」と信長様は怒った。
しかしそれは間違いで、秀吉殿は草履を懐にしまい、温めていたのだ。
それを知った信長様は、それ以来秀吉殿を深く信頼した。
以上のような逸話を聞いた事がある。
そんな逸話を持つ秀吉殿の事だから、もしかして俺の好みを把握しているのかもしれない。
いや、それはないか。
次に食べるのは、牛肉。
「これが今回の食事の中心となる物です。」
秀吉殿の言葉を聞き終わらないうちに、肉にかぶりついた。
口の中が痛い。
胡椒がかけられているのだろう。
でも、胡椒がかかっているからこそ旨い。
「ごちそうさまでした!」