132話 爆破計画失敗
「煕子殿が人質になりたいと?」
信長は聞き返した。
「はい。そう申しております。入城し、人質とする事を認めますか?」
「ああ、認める。」
「かしこまりました。」
信長は、煕子の罠にはまったのだ。
「それと、茶々を呼べ。」
「茶々様、ですか?なにゆえ?」
「あいつは、人の心を読む事ができるのだ。」
「そんな事ができるのですか?」
「ああ。あれは、浅井家を滅ぼしてから間もない時の事だった。」
信長は、語り始めた。
父・長政を失った茶々は、抜け殻のようなだった。
なので、信長はおとぎ話を聞かせてあげようと茶々を尋ねた。
「伯父上、何の用ですか?」
追い返されると思ったが、茶々は出迎えてくれた。
「そなたに、おとぎ話を聞かせてあげようと思ってな。」
「・・・絶対に噓ですよね?自分が嫌われていないか確かめようとしているだけでしょう?」
図星だ。
「なぜ、分かる?」
「私は、人の心が読めるのです。呼吸が乱れていたり、目が細かく揺れ動いているのであれば、噓をついているという事になります。」
その時から、信長は茶々を信頼するようになったのだ。
◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 俺視点 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆
「信長様から呼び出し?」
「はい。茶々様もご一緒にとの事だそうです。」
「分かった。」
翌日、俺と茶々は安土城に登城した。
「よく来たな。今回、呼び出したのは、光秀の妻・煕子殿が人質になりたいと申し出てきたのだ。何か企んでいないか、確認してほしい。茶々、そなたは人の心を読む事ができるのだろう?」
え、そうなの?
聞いてないんですけど。
「はい。やらせていただきます。」
茶々は、煕子殿の部屋へ向かった。
◆◆◆◆ ◆◆◆◆ 茶々視点 ◆◆◆◆ ◆◆◆◆
この人が煕子ね。
さて、呼吸は・・・正常。
でも、目が細かく揺れ動いているし、手が震えている。
ん?
何だろう、この赤い袋は?
「この袋は何ですか?」
「荷物を入れています。」
声が震えている。
もしや!
袋を縛っている紐をほどくと、何かがこぼれた。
「これは・・・火薬!」
私が叫ぶと、伯父上の小姓が入ってきて、煕子を縄で縛った。
「やはり、何かを企んでいたか。」
怒りに満ちた声で、伯父上が言った。
「逆さにして磔だ!」
当然の処置だろう。
安土城を爆破する計画を練っていたのだから。
4日後、明智の残党狩りを命じられていた者から、光秀の娘と息子を見つけたという知らせが入って来た。
場所は、紀伊。
意外と近かった。
最初は中国地方に居ると聞いたから、居場所を転々としていたのだろう。
3人の男と4人の娘が安土城に連行された2日後、煕子を含めた8人が磔にされた。
伯父上は煕子を殺すつもりではなかったのに、馬鹿な女だ。