130話 執筆活動再開
戦が終わったので、茶々は再び執筆活動を開始した。
「これからは小説で稼ぎますね。」
「ジャンルは?」
「じゃんるとは何ですか?」
「ああ、その、こう、つまり、何を題材とした小説なんだ?」
「狂気に満ちた人間を題材とします。」
「へ、へえ。」
サイコパスを題材とした小説か。
「読みます?」
「ああ、読ませてくれ。」
・・・
冒頭の言葉が、『女は怖い』。
「ちょっと待て、茶々。平穏な世の中にこの過激な内容の物語が知れ渡るとなると、落ち武者たちを刺激してしまい、一揆が起こる可能性がある。もっと優しい内容にしてくれ。」
「かしこまりました。」
数時間後、茶々の作品を読んでみた。
「これ、随筆か?」
随筆とは、自分が思った事を記録したエッセイのような物だ。
世界最古のエッセイ小説は、枕草子だ。
「はい。」
「ふむ。どれもこれも共感できる事ばかりだな。」
『針の穴に糸を通す時は、とても苛立つ。』
あー、分かる。
家庭科の授業とか嫌いだったし。
「さて、今日の仕事は終わりにします。」
後片付けをした茶々は、少し眠ると言って自室に閉じこもってしまった。
暇だから、散歩する事にした。
7月中旬だから、かなり暑い。
蝉が鳴いており、農民たちは団扇で暑さを凌いでいた。
「お殿様だーっ。」
はて?
見知らぬ子供たちが走ってきた。
「これあげる!」
ま、饅頭?
「こら、お前たち!」
大人の女性が、子供を叱った。
「どうか、ご無礼をお許しください。ほら、お前も謝りなさい。」
「やだ、僕は日ノ本一の剣士だぞ、ここで頭を下げろ!」
「もう!」
やんちゃだな。
「日ノ本一の剣士になりたいのなら、私の小姓になりなさい。」
ん、誰だ?
蘭丸!
「やだやだ、僕は誰にも屈しない!」
「別に強制している訳では無いのだよ。ただ、私の家臣になれば、出世は間違いなしだよ。」
優しい口調だ。
「本当か?」
「噓偽りなど申す訳が無かろう?」
「なら、小姓になってやる。」
蘭丸って、見知らぬ人も家臣にできるのか。
凄いな。
その能力に相応しい褒美を与えよう。
「蘭丸、そなたに松本城を与える。」
「はっ、ありがたき幸せ。」
10日後、森家は松本城に入城した。