127話 冷酷なプリンセス
四国に上陸した。
どうやら、元親は民に慕われていたようだ。
民が、「元親様を救え!」と叫びながら突っ込んでくる。
「皆・・・」
手足を縛られている元親は、自分の為に立ち上がってくれる民に涙を流していた。
「悔やめ、その命が果てるまで。お前は民の期待を裏切ったのだ。織田家に宣戦布告する、その度胸だけは褒めてやる。だが、油断したな。お前の軍事力と織田家の軍事力には、圧倒的な差があるのだ。
四国の田舎者が、征夷大将軍に勝てる訳がないだろう。」
元親は歯を食い縛り、茶々からの侮辱に耐えている。
意外と、茶々は毒舌だ。
「あの女を殺せ!」
民は茶々に矢を放った。
矢が茶々の足や肩に刺さる。
それでも茶々は表情を変えない。
民を睨んでいる。
茶々は火縄銃で民を撃ち殺した。
美しい茶々の髪が、風になびく。
「邪魔だ、愚かな人間ども!」
低く、凛とした声だった。
「愚かだと!?」
「殺してしまえーっ!」
あー、うんざりする。
しつこい。
「信長様、大砲ってあります?」
「ああ、あるぞ。」
「貸してください。」
信長様は承知し、足軽たちに大砲を撃たせた。
太陽が真上に来る頃には、民は全滅した。
民に手を合わせていると、茶々に扇で叩かれた。
「武士に情けは無用。行きましょう。」
冷たい。
どうして茶々は、優しさというものがないのだろうか。
「すまぬな、東。」
「信長様が詫びる必要はありません。」
「茶々は、きっと実力で命の重さを区別しているのだろう。極悪な女と思うかもしれないが、役立たずを嫌うのはわしと同じだ。ただ、幼い頃に父を亡くし、性格が歪んでしまっただけなのだ。」
「・・・」
「伯父上、東様、早く行きましょう!」
茶々が叫ぶ。
元気な声だったが、心は冷たいままだと思う。
「ただ、茶々には誰も持っていないような潜在能力がある。」
「潜在能力?」
「ああ。時々、危険な匂いがするのだ。」
危険な匂い?
何だそれ?
「とにかく、行くぞ。」
「は、はい。」
馬に乗り、岡豊城の近くに布陣した。
「攻めよ!」
大軍が、1つの城に攻めかかった。
侍女や子供までもが、男と混じって戦っている。
なるべく侍女や幼い子供は殺さないようにした。
でも、茶々は、反抗しない侍女も殺す。
冷たい目で、当たり前のように人を殺す。
「茶々、侍女や子供は殺すな!」
「無理です。」
逃げ惑う人々は、茶々によって残酷に殺されていった。
「やめろって!」
「無理です。」
「どうしてだよ!?どうして罪の無い人を殺す!?」
「少し黙ってくださいな!」
どうしてだ、どうしてだどうしてだ。
初めて会った時は、あんなに可愛かったのに。
大人しかったのに。
これが本性なのか?
信じたくないから、もうやめてほしい。
人を殺す茶々なんて、美しさの欠片もない。
「!」
俺は目を見開いた。
斬られた。
茶々が、名も無き雑兵に、斬られた。
「茶々!」
俺は駆け寄る。
「大丈夫か!?」
様子がおかしい。
茶々が小さな声で笑っている。
「クククククッ。」
狂気に満ちた顔で、茶々は雑兵に襲い掛かった。