124話 希少性
「申し上げます!長宗親家は、大軍を率いて御所に攻め入らんとしています!」
「そうか!今すぐ評定を開くぞ!」
帝には悪いが、これは長宗親家に攻め入る口実にもなる。
長宗親家は、自らの野望によって滅びるのだ。
自業自得。
「これより、評定を始める。」
蘭丸が言う。
「今回、皆を集めたのは、長宗親家が御所に攻め入る件について、だ。御所には我が妹・奈々がいる。皆も知っていいるだろうが、奈々は親王と婚約した。長宗親家が逃がすはずがないだろう。その為、我らは信長様と共に長宗親家と戦う。戦支度だ!」
「はっ!」
5万の兵を率いて出陣だ。
兵糧は信長様にねだるのではなく、自力で集める。
それと、民に申し訳ないが、1つの家につき、5合差し出してもらう。
長宗親家との戦が終わったら、しばらくは税を免除してあげよう。
10日後、戦支度が整った。
かなり大きな出費だったが、奈々の命には代えられない。
・・・てか、奈々ってロケットランチャー作れるんだから、1人で戦っても大丈夫だと思うんだけどな。
まあ、多勢に無勢だ。
助けてやろう。
「出陣!」
俺の声に、足軽たちも呼応した。
一応、正室の茶々も出陣する。
「戦なら、お任せください。」
これほど男前な姫はいないだろう。
甲冑姿の茶々も、可愛い。
民は、茶々の凛々しい姿にうっとりしていた。
男は、鼻息を荒くしている。
「なぜ皆は私をじろじろと見ているのですか?」
「そりゃあ、美しいからだよ。」
「そんなに美しいですかねえ。」
「何言ってんの、美しいよ。」
茶々は自覚が無いようだ。
俺たち一行は、午後に美濃の国境を越え、信忠様に出陣をお願いした。
「恩人の願いを、断る訳にはいきません。それに、御所に刃を向けるなど許せるはずがありませんからね。」
正義感の強い信忠様は、協力すると言ってくれた。
5万の軍勢に3万の軍勢が加わり、8万の軍勢になった。
次は、サルでお馴染みの秀吉殿に援軍を要請だ。
夜になると、秀吉殿が治める遠江の国境を越えた。
体内時計から推測すると、午後7時だろう。
お腹が空いているのも仕方がない。
秀吉殿が戦支度をしている間に弁当を食べた。
「東殿、出陣の用意が整ったべ!」
秀吉殿の2万の軍勢が加わり、兵の数は10万になった。
その後も、初対面の柴田殿や、利家殿や、信長様などの軍勢を合わせて、25万もの軍勢になった。
「申し上げます!長宗親家の軍勢は、全ての部隊を合わせて24万!」
「くそ!たったの1万の差か!」
もう少し、差をつけたかった。
「東、焦るな。戦は数ではない、頭だ。」
そう言って、信長様は自分のこめかみを指差した。
「俺は信長様と違って、戦なんて上手くありません!」
「わしと違うから良いのではないか。」
「え?」
みんなちがってみんないいという言葉を知らなかった訳ではない。
そんなのは綺麗事だと思っていた。
「誰がどこにでもいそうな奴を欲しがるのだ?希少性があるからこそ価値があるのだ。」
確かに、信長様の家臣団は個性豊かな武将たちでいっぱいだ。
「そなたにも誰も持っていないような能力があるはずだ。目覚めていないだけで。」
俺は目を閉じ、黙って考えた。
全ての部隊を合わせて24万・・・全ての部隊・・・全て・・・
「そうか!全ての部隊の兵の数が多いだけで、本陣はそれほど多くないはず!」
桶狭間でも、信長様は本陣のみを攻撃したから勝てた。
その名案を、採用させてもらおう。