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我らは信長家臣団  作者: 大和屋
天下統一編
122/178

122話 親王の婚約者・奈々

「東様っ、大変です!!」

三成は、これまでで一番慌てた様子で走ってきた。

「どうした?」

「奈々様が、親王様と婚約したと・・・」

「なあにい~、どうしてそうなった!?」

「知りませぬ!」

どうしてだよ?

「彼氏なんていらない」とか澄ました態度を取ってたくせに、どうやったらそんな事になるかなあ?




事の発端は、今から一ヶ月前。

奈々は、学問嫌いの親王に、様々な事を教えていた。

兵法や和歌、俳句などなど、重要だと思った事は全部叩き込んだ。

そうやって交流していくうちに、親王も奈々に恋心を抱いてしまう。

しかし、戦国時代は政略結婚が殆どで、自らの意思で相手を選ぶ事は難しい。

当然親王の祖父である正親町天皇が許すはずがない。

「おじい様、私は奈々殿に本気で惚れてしまったのです。」

「ならぬ。一大名の妹が、わしの孫の正室になるなど許せるものか。」

「それはおじい様の勝手です!私の事を本気で愛しているのならば、私の妻は私に決めさせてくださいませ!」

「・・・そこまで言うのなら、仕方あるまい。そなたの自由じゃ。」

「ありがとうございます!」

親王は喜んだ。

身分など関係なく、いつのまにか教育係となっていた奈々は、わずか4歳差といっても母のような存在なのだ。

身分が高いゆえ、宮中に仕える公家や下女の期待を背負わされた親王は、苦しかった。

でも奈々だけは、普通の、皆と同じ人間として扱ってくれる。

「奈々殿!」

夜、親王は奈々に話しかけた。

「何ですか?」

昼の仕事が忙しかったせいか、奈々は疲れ気味だった。

「お疲れの所申し訳ないが、言わせてもらう。」

親王は、息を大きく吸い込んだ。

「奈々殿と祝言を挙げたい!」

大きな声だった。

その声は、内裏の外にも響いた。

「祝言ですって?」

「何事かしら?」

眠っていた下女たちは、親王の大きな声で目覚め、騒ぎ出す。

女は恋の話に食い付きやすい。

「皆、起こしてすまなかった。良いか、今日から奈々殿は私の婚約者じゃ。話す時も敬語で話せ。」

新参者の異例の出世に、下女たちは不満そうだ。

「なぜ不満そうな顔をしている?宴に参加せよ、今宵は無礼講じゃ。」

笑いながら、親王は宴の準備をした。

「羨ましいわね。」

「いいな~。」

まだ即位していないとはいえ、親王は未来の天皇。

親王の正室になるという事は、天皇の正室になる事と同じ意味なのだ。

「ちっ。あんなクソ女のどこが良いんだよ?」

誰にも聞こえないぐらい小さな声で、ある下女はつぶやいた。

その下女は、奈々の出世を妬み、奈々に髪の毛を掴まれた中年の下女だった。

「殺してやる。絶対に殺してやる。」

殺されるのは自分だという事を、彼女はまだ気付いていない。

全く、馬鹿な下女である。

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