118話 蘭の潜在能力
信忠様から届いた手紙を、くしゃっと握った。
「何て・・・ことだ・・・」
驚く。
人生の中で一番、焦る。
なぜだ、なぜだと、自分に問いかける。
どうして蘭は攫われた?
俺の注意不足か、それもと蘭が金持ちに見えたからか。
どちらにしろ、人攫いから蘭を取り戻さねば。
気付かなかった俺が憎い、許せない。
「東様、急ぎ、出陣しましょう。」
茶々が訴える。
「東様!」
俺は、蘭が攫われた事に気付かず、呑気に遊んでいたのか。
茶々が肩を叩くが、俺は何の反応も示さない。
「私の声が聞こえませぬか!?」
頬が熱くなる。
ヒリヒリと痛み、抓ってもあまり痛くない。
「蘭殿が、人攫いの暴力に必死に耐えてるというのに、あなたは何をぐずぐずしているのです!?」
茶々は檄を飛ばすと、早足で部屋から出て行った。
ああ、口うるさい茶々がいなくなった。
と思ったら5分くらいで戻って来た。
「ほら、食べて元気を出してください。」
差し出されたのは、湯漬けだった。
「ほら、早く!」
茶碗を持ち、湯漬けを食べた。
というか、茶々が無理やり、口に流し込んだ。
・・・これぞ鬼姫。
側室を迎えても怒らないのに、ゆっくりしてると怒るだなんて、聊かおかしいのではと思ったが、火に油を注ぐ事はしたくないので黙っていよう。
「行きますよ。皆の者、今すぐ武装して、出陣しなさい!!!」
耳をつんざくような大きな声で、茶々は叫ぶ。
「私も武装して、蘭殿を探してみます!さあ早く!」
それでも、放心状態の俺の体は硬直したままだ。
「蘭丸、東様に甲冑を着させなさい!」
「はっ。しかし茶々様が出陣する必要は無いかと。」
「それでも、私は行く!」
やっぱり、1児の母はすごいなあ。
「ほら殿、お立ちください。」
蘭丸は俺に、甲冑を着させた。
「茶々様の後を追いましょう。」
乗馬し、馬を美濃へ進めた。
「なあ、いい加減に仲良くしようぜ。」
「無理だ。お前なんぞにかまってられるか。」
蘭は抵抗し続ける。
「てめえ、殺すぞ。」
「殺したら、お前は耳と鼻を削がれ、磔だな。」
「黙れ!」
頬をぶたれた時とは違う痛みが、蘭を襲う。
殴られたのだ。
怖気付くこてゃなく、蘭は人攫いを睨む。
(血の味がする・・・)
口の中が切れてしまったようだ。
「これで分かったか、お前は俺の嫁になる運命なんだよ。」
蘭は冷水をかけられた。
これまでに感じた事が無かった屈辱を感じ、怒りに震えていると、人攫いは笑った。
「馬鹿だな、まだ分からぬのか?お前は・・・」
「うるさい!!!!」
蘭の中で、何かがプツッと切れた。
潜在能力が、目覚める。
人攫いの親分を蹴り、顎を殴ると、反撃にあった。
しかし、我を失った蘭には痛くもかゆくも無かった。
親分の髪をくしゃっと掴むと、ずりずりと引き回す。
親分の毛根が壊れ、髪の毛が生えなくなっても、蘭からしたらどうでもいい。
「ぐえっ。」
遂に蘭は親分を殺った。
そして、親分の遺体を踏みつけた。
穏やかな人ほど、怒れば怖いです。