113話 名探偵・信忠!!
蘭が人攫いと遭遇した場所は、天下人・織田信長の嫡男、信忠が頻繁に訪れる場所だった。
目的は、鷹狩り。
信忠は父の信長の影響を受け、日頃鷹狩りを好んでいた。
「何だ、これは?」
信忠は風呂敷を見つけた。
風呂敷の中を見てみると、高級品がぎっしりと詰まっていた。
(有力な武士がここを通るなんて聞いてないぞ)
信忠は、美濃に入る武士は必ず許可を得なければいけないと決めていた。
(いや、これは姫が通った跡だ)
信忠がそう思ったのは、高級品の品々の中に、おしろいが入った彫り物があったからだ。
(おしろいは武家の姫が使う高級品・・・誰だ?)
信忠は手がかりとなる証拠を見つける為、辺りを注意深く観察した。
(これは・・・髪?)
信忠は長い髪を見つけた。
(胡桃の油の匂いがする・・・)
胡桃の油は、調味料でもあるが、ある程度権力を持つ姫にとっては『命』なのだ。
姫は美貌を命同様に思っている。
胡桃の油を使うと、晩年になっても白髪が少なくなる。
しかし、庶民の娘は油を使わない。
油は南蛮から伝えられたばかりで、庶民の間では馴染んでいない。
東が油を買えたのは、店を経営する商人が豪商だったからであり、どこにでもあるような店では油は取り扱われていないのだ。
「殿、どうなされましたか?」
信忠の小姓が言う。
「いや、何でもない。」
信忠は噓を付いた。
信忠は再び考え始めた。
(ん、あれは・・・)
信忠はまたまた何かを見つけた。
それは、蘭が信長から受け取った、織田木瓜の紋が刺繍された着物だった。
(織田木瓜の紋が刺繍された着物・・・これは、父上が恩人のみに与える品物ではないか)
数々の高級品、おしろい、信長の恩人。
(これは、東殿の正室もしくは側室の物に決定だな・・・)
案外、信忠は探偵向きなのかもしれない。
真実はいつも一つ、という名言を、信忠は幼い頃に信長から聞いた。
幼い信忠にはまだ難しすぎたが、信忠は今になってその言葉の意味を知った。
(本当に、そうなのだろうか)
信忠は信長とは違い、真実は一つとは限らないと思っている。
(冤罪や虚言などもあるだろうに・・・)
信長と信忠の理想は少し違うのかもしれない。
一応親子であはあるが、浅井久政と長政のように価値観が違う親子も存在する。
(東殿に報告せねば・・・)
信長と信忠の価値観は、違う所もあるが、行動が素早い事は同じだ。
「鷹狩りは中止じゃ、今すぐ城に帰るぞ。」
「はっ。」
信忠は早足で岐阜城に向かった。
秀吉の居城・岡崎上では、秀吉がある事を計画していた。
「ひひひひひひ・・・」
まるで悪魔が憑依したかのような、精神に問題がありそうな笑い声だ。
「殿、準備が整いました。」
家臣が、秀吉に報告した。
「そうか・・・遂にこの日が来たか・・・」
秀吉は何かを企んでいる。
秀吉は派手好きであり、質素な物を嫌う(嫌いという訳でもない)。
少し骨張った手で、秀吉は盃に酒を注いだ。
「殿、殿がお考えになられた計画とは、どのような内容なのですか?」
「ふっ、教えてやろう。」
秀吉は少し間を置いて答えた。
「莫大な収入を目的とした、祭りを開催する!!」
秀吉の計画
・人を集め、茶を点てたり、踊りを披露したり、各地域の特産物を揃えたりする
・そして、莫大な収入を得る
成り金野郎の秀吉が考えそうな事だ。
名探偵コ○ンの名言を否定してごめんなさい。
特に、コ○ンファンの方には、心よりお詫び申し上げます(笑)




