103話 朝廷
学校で女優の真似事をする事になり、私が主役を演じた時、私の心臓は飛び出そうだった。
ただ、今回はそんな物じゃ無かった。
私の前に、帝がいるのだ。
平成では一般人でも、テレビを通じて天皇陛下の姿を見る事は可能だった。
だが、戦国時代は、身分を重視する教えが広まっており、一般人が帝を見る事は、断じて許されない。
私は令和では、ただの中学3年生。
戦国時代に行くと、大名の妹。
戦国時代で生きるのも、悪くは無い。
「そなたは、我の事をどう思うか?」
う、うざい。
そんな事を聞かれたら、「素晴らしい人だと思います。」と言うしかないじゃない。
「素晴らしき御方だと思います。」
「・・・そうか。で、そなた、我に仕える気は無いか?」
「給料はどれほど?」
「200000文でどうだ?」
100文が1万円くらいだから・・・2千万円!?
「御受けいたします。本日よりよろしくお願いします。」
実は私、宮仕えに興味を持っていたのだ。
私は個室へ案内された。
「本日より、この部屋はあなたの物になります。御自由にお使いください。」
やった、こんな豪華な部屋初めて。
広さは、私が見た大阪城の総面積と殆ど変わらなかった。
逆に、こんな広い部屋、どう使えば良いのだろうか。
とりあえず、花でも飾ろう。
私は庭に出て、薔薇とヒガンバナを摘んだ。
ヒガンバナは触れると体に良くないらしいので、手袋をはめて摘んだ。
花を飾るとまあまあ良い感じにはなるが、まだ足りない。
棚を置こう。
その棚に、おやつや薬などを入れた壷を隠すのだ。
おやつは私の心を満足させる為。
薬は、私の腹痛に効く薬を用意しよう。
1日3回以上は、腹痛に見舞われるから、腹痛に効く薬はありがたい。
帝に気に入ってもらうには美しくないといけない。
だから、おしろいも用意しよう。
他にも、着替えや御香などを用意した。
まだスペースは余っているが、それはまた別の機会に考えよう。
「新入りの奈々、失礼。」
数人の供を従えた女性が入ってきた。
「私は由。帝に仕える侍女である。困った事があれば何でも聞け。」
「はい。」
「・・・まずは、大広間の掃除だ。」
「かしこまりました。」
私は少し大きめの器に水を注ぎ、雑巾を持って大広間へ向かった。
プライドの高い侍女たちは、埃や汚れを見つけても掃除をしない。
埃や汚れを掃除するのは、雑用の為に雇われた下女たちだ。
私は雑巾を、器に張った水に浸し、ある程度絞った。
そして、水分をたっぷり含んだ雑巾を床に当て、力を入れて磨き始めた。
床が次第に綺麗になっていく。
さすがは帝の住居、広すぎる。
広ければ広いほど、大名たちに権力を誇示する事ができるが、掃除を担当する者からすれば、ただの迷惑に過ぎない。
大広間の掃除が終わる頃には、日は沈み、月が昇っていた。