1話 鈍器
算数のテストの答案用紙の右上には、大きく点数が書かれている。
まんまるお月様。
理系か文系かと言われると、バリバリの文系だからとはいえ、これは酷すぎる。
今は、進学塾の帰りだ。
「ブツブツブツ・・・ブツブツブツ・・・」
数学の公式を超小声でつぶやく。
俺は狭くて暗い路地裏を歩いて、家の方向へ歩いた。
「・・・あっ。」
数学の教科書が手からすべり落ちる。
教科書は地面に落ちた。
歩きながら、文章を読むのは悪いことだ。反省する。
俺は教科書をリュックにしまい、チャックをしめた。
「ん?」
背後に誰かの気配を感じ、振り向くとそこには、鈍器を抱えた男がいた。
前頭部に激しい衝撃を感じた。
痛い、痛いどころか死ぬ。
意識が薄れていく。
嫌だ。
俺は、まだ成し遂げていない事が腐るほどある。
イギリスにあるグリニッジ天文台も見たかった。
夢である、小説家にもなりたかった。
今まで、時間を大切にしてこなかった自分を恨んだ。
とある邸宅で、サングラスをかけた男が、ソファに腰掛けていた。
『続いてのニュースです。昨日、東京都に住む高校生、大滝東さんが、姿を消しました。東さんの妹・奈々さんに聞くと、東さんは進学塾の帰りだという事が分かりました。』
テレビのモニターには、東が笑っている写真が映し出された。
「どうなる事やら。」
男は、不気味な笑みを浮かべた。
その男は家から帰ったばかりで、ダイニングテーブルには、数学の教科書が置かれている。
教科書は、赤く染まっていた。
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