〜序章〜
お久しぶりの方はお久しぶりです。
木夕 鈴翔です。
これがはじめての作品だよという方はありがとうございます、はじめまして!(*^^*)
またまた歴史ものですね!笑
連載を続ける気になるかは皆さんにかかっております笑笑
どうかよろしくお願いしますね!!
では、どうぞごゆっくり♪
【序章】
――あぁ痛い全身痛くて吐きそうだ。
息ができない、視界が、真っ赤だ。
もう何も考えたくない。痛い。苦しい。
俺は、ようやく―――
―――死ねるのか。
崖の下には肉塊と化す青年の死体が、血と紅葉の赤に染まって転がっていた。
彼は秋の風物詩を見ようと山に足を踏み入れたのではなかったか。
ならなぜ、今そこで物言わぬ塊となり―――息絶えているのだろう?
彼は死んだ。
その手に、すでに何の赤なのかもわからなくなった、赤い、赤い、紅葉を一枚
握りしめて―――。
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青年の名は『蓮昇』といった。
正直青年というには遅い年齢ではあったが、彼の容姿はまだ青年のそれであった。
彼は神奈川県、箱根の由緒ある温泉街に生を受け、順調にその齢を増やしていった。いわゆる平平凡凡な人生を歩んでいたのだ。あえて非凡さを言うのであれば、母親を幼いころに事故で失っていることくらいだろうか。
しかし中学・高校・大学と進むにつれ彼の中にあった天賦の才が開花し始める。
―――『小説家』
それが彼の選んだ道だった。
彼の秀でた文学の才能は瞬く間に彼を『天才小説家』へと変えた。
生きるのには困らないほどの収入と、名声を、彼は手にしていたはずだった。
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「―――というのに、まさか自らその生を断つとは…。本当に、君に何があったんだろうねぇ…」
俺は死んだのか……?
体がもう痛くない。暖かくて、気分もいい。
ここはどこだ?天国だろうか?
というか、自殺者でも天国に行けるものなのだろうか?
「ほらいつまで寝ているんだい?起きて教えてくれないか。君ほど充実した生き方をしてきた人間が、命を粗末にした理由を」
誰の声だ?そもそもこれは、俺に話しかけているのだろうか?
神様か?それとも天使……?
「蓮昇くん」
蓮昇?それは、俺の、名前――――
「っ…!?」
「おや、起きたかい?」
「あ、あなたは…っ…一体」
「あーーーーごめん一回ストップ。その質問に答えるのは後にさせてもらえるかい?時間があまりないんだ。君が思ったより、ながーくぐっすり寝てたから」
「す、すみません」
反射的に謝る。いや、謝る必要があったか微妙だが。
「とりあえずこちらの質問に答えてもらおう」
寝転がっていた蓮昇をしゃがんでのぞき込んでいた男はよっこいしょと立ち上がった。
その際に耳にかけていた銀色の長髪がさらりとこぼれ落ちる。
男は青空を閉じ込めたような切れ長の目でそれを見、長い指で再び髪を耳にかけた。
細身の体に膝より長い黒のロングコートが映えた。
およそ齢は25くらいだろうか。
『ミルク色の空間』で、『俺』は全身黒をまとったその男に目が釘付けになった。