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そんな優しく過保護なお兄様の助力もあって、私は成人して直ぐに家名を付けたエーデリアン児童養護施設を開くことができた。そこのところはちゃんと感謝していますよ、お兄様。
でもそもそもこの世界に児童養護施設なんてものが無かったからか、未だに私が保護できているのは三人だけ。アメリを入れれば四人かしら。物珍しさに知名度だけはそこそこあるけれど、まだまだこれから頑張らないといけないわね。
この世界では教会が孤児院をやっているから、孤児は運が良ければそこで暮らしていけている。けど、私に女神様がしてほしいのは、教会みたいに孤児を養うってことだけじゃないと思うのよ。家庭内で虐げられている幼女や危険な目にあっている童女を救うこと。それこそが、日本で平和に暮らす幼女達を知る私がすべきことなんじゃないかしら。価値観が違うからこそ出来ることもあるはずよね。
まぁ貴族とはいえ女の私を信用できないって人も多いから、ちょっと手詰まり感があるのが現実。人の心はなかなか変わるものじゃないものね。女神様の苦労が少しわかった気がするわ。
と、そんな感じで過去を振り返っている間に出かけないといけない時間になっちゃった。
お兄様を筆頭に、家から多少の援助を貰っているとはいえ、施設の経営には何かとお金がかかる。だから私は女神様に押し付けられた加護を最大限活用して毎日バリバリ働いているの。子供達といられないのは寂しいけれど、これも彼女達の居場所のため。そして私の癒しを守るため。やれることはやらないとね。
「あ、せんせーもう行っちゃうの?」
私が荷物を取りに立つと、すかさず寂しげな声がかかった。あぁ、そんなしょんぼりしないで!うるうるさせた目で見つめないで!尊死する!じゃなかった仕事に行きたくなくなる!
「先生はお仕事があるから仕方ないでしょ?ほら、お庭のお花さんに水をあげに行きましょう?」
「うん!先生ばいばい!」
「あ、うん。皆いい子でね」
気を使ってくれてありがとう。聞き分けが良い素直なところも大好きよ。でももうちょっと引き止めてほしかった。どうしよう、私の方が我儘で大人げないかも……。
あと「ばいばい」は何か悲しいから「行ってらっしゃい」だと嬉しいです。