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異世界で聖母と呼ばれていますが幼女が尊すぎるだけです  作者: 愁
一章 ロリコンではない。でも聖母でもない。
4/8

 女性が魔力の退化した世界。しかも現在魔法は生活に欠かせないものとくると、女性の立場が悪いというのは想像に難くない。もしかしたら昔の日本より酷い女性差別が根付いているかも。

転生する前に聞くと、女としては嫌な気分になるわね。何も聞かずに放り込まれたらもっと最悪だったろうけど。

「ご想像の通り、女性軽視や差別が当たり前の世界。女神としても嫌だけど、人の心理思考に干渉はできないからどうしようもなくて。アンタの愛しの幼女達はね、魔力が少ないだけじゃなくて、子供故に非力で繊細で大人がいなければ何もできない。家庭内で冷遇されるだけじゃなくて、酷いところは捨てたり売り飛ばしたり、物扱いされたりもしている。殺されたほうがマシな状況にいる子も沢山いるわ」

「何ですかそれ!?あんまりじゃないですか!!!」

私の想像なんていちごみるくにガムシロップと練乳混ぜた並に甘々だった。

あぁ、どうしよう。そんな世界に転生するなんてお断りするのが普通なのに。私自身だって差別の対象になりうるっていうのに。


――それでも目の前に虐げられる幼女や童女がいて、助けに行かないなんてありえないじゃない。


えぇ、認めましょうとも。私のすべては幼女が基準。上等じゃない。守るべき、尊ぶべき存在を愛せずにいられるものですか。

「女神様!すぐに転生させてください!一刻も早く!」

「アンタならそう言うと思ったわ。本当に良い子だものね、ロリコン傾向だけど」

「ロリコン傾向でもないです!」


 すっと女神様が天に向かって殺傷性の高そうな杖を掲げると、真っ白な虚空から一枚の紙が落ちてきた。ひらりと落ちた紙は吸い寄せられるように私の手の中におさまる。あ、皆勤賞で貰った賞状の質感に似てる。懐かしい。

「それは転生するにあたっての約束事項を記したものよ。普通に転生させる子には関係ないんだけど、アンタはちょっと特別ってことで」

女神様の特別扱いってちょっと照れるわね。何々えーと……


『女神様とのお約束~破ったらどうなるかはご想像にお任せ~


一、転生先で救える限りの幼子を救うこと

二、転生先で女性の地位向上に尽力すること

三、転生先で不祥事(幼女に手を出したり)を起こさないこと


以上を守って健全な新生活頑張ってね。女神


転生者名:_________ 』


……ひとつだけ、どうしても解せない。

「この三番目のやつなんですか!?私の信用皆無!?酷くないですか!?」

「いやだって……幼女のために転生します!っていう人を信用するのはちょっと女神としてどうかと思うのよね。純粋な気持ちなのは伝わってくるんだけどねぇ……心変わりして何か起こされたら遅いじゃない」

「何も言い返せない自分がつらい……」

まぁ三番目はともかくとして、一番と二番はわざわざ約束なんてしなくても取り組むつもりでしたよ。自分の手で救える幼女は救いたいし、生活する以上過ごしやすいに越したことはないし。

「問題なかったらその下のとこにサインよろしく」

「はいはいわかりましたー」

女神様が懐から万年筆っぽいペンを取り出して差し出してきたので、ささっと受け取ってお名前記入。かきかき。

『深田真璃亜』

この名前とも今生でお別れかと思うと寂しさが込み上げてくるわね。花のJKで死亡なんて、親不孝者でごめんなさい、お母さんお父さん。真璃亜は転生先で幼女のために頑張ります。見守って……何だろう申し訳ない気がする。

「それじゃ儀式を始めるから目を瞑りなさい。そのままだと目がぁってなるわよ」

「それって日本人的には一生に一回は言いたいセリフじゃないですか?」

「言いたいなら勝手だけどどうなっても知らないわよ」

「ばっちり目ぇ瞑りましたいつでもどーぞー!」

 呆れるような女神さまの溜息が聞こえると同時に、私の周囲が光に包まれたようだった。目ぇ瞑ってても十分眩しいです。

ふわりと浮き上がった足元から感覚が掻き消えて、あたたかな微睡みに溶けていく。まるで深い眠りにつくように、私の意識は遠のいていった。

「……よい日々を、マリア」

優しい声が子守唄のように響いて、不思議と私の心を満たしていく。

さようなら、深田真璃亜としての人生――……

「あ、アンタには私の加護つけとくから安心しなさい!」

ちょっとまってそれどういう事か詳しく――あ。

プツンッと、そこで意識は完全に途切れた。


 そうして私は無事?転生を果たし、侯爵家の紅一点として産まれた。上にお兄様が一人。妹はどれだけ待っても出来なかった。ショック。

詳しく聞けなかった女神様の加護については、物心つく頃にはハッキリとした。

うん、チート。

でもね、女神様。何度でも言うけど私はすごい能力より妹が欲しかった。切実に。

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