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転生する前、私は深田真璃亜という名前の普通の高校生だった。保育園の先生を志して専門学校を受験した帰り、トラックに突っ込まれて死んだ、らしい。らしいっていうのは、私自身よそ見をしていた時に突っ込まれてトラックを見ていないから。私が最後に目にしたのは天使の如く可愛い幼女だった。あの子のお姉さんになりたい人生だったなぁ。
「一つ聞きたいんだけど、アンタってロリコンなの?」
次に気づいた時、私は真っ白な空間で真っ青な髪をした綺麗な女の人にすっごい微妙な面持ちでそんなことを聞かれていた。初対面の人に割と失礼じゃない?
「あ、今初対面に失礼だなとか思ったでしょ?そういうのわかっちゃうんだからね。むしろ女神にそんな態度の方が失礼だからそこんとこよろしく」
うわぁ、女神自称しちゃうとかどうなの?どうせなら天使みたく可愛い幼女に会いたかった。
「ほらまた失礼なこと考えた!アンタいい加減にしないと転生させないわよ!」
「転生?」
「そうよ!ってやっと話が進められる!あのね、アンタはトラックにはねられて死んだの!ここは所謂天界よ。人間は死なないと来れないんだから有難がりなさい」
まったく有難くない。
でも何だか体がふわふわするというか、足元が覚束ない感じがする。手を握ってみても力が全然入らないし、死んだということは確かなのかもしれない。あの人が女神なのかは置いておいて。
だって女神っていう雰囲気じゃないんだもの。青い髪は綺麗だけど、つり目がちな瞳とか、不満げな口元とか、あと手に持った殺傷性の高そうな杖とか、女神っていうよりDQNとかヤンキーって感じがする。
「アンタって学習しないの?いい加減にしないとこの杖でもう一回殺すわよ」
「スミマセンデシター」
「よし殺す」
――間。
本当に殴りやがりました女神様のせいで頭が痛い中正座をさせられている私に、女神様は転生について詳しい話をしてくれました。曰く、生前問題を起こすことなく、純粋で綺麗な魂の持ち主を女神様が管理する世界に転生させており、その基準に私は合致したと。けれど女神様は何か気にかかることがあるそうで。
「いやさ、アンタって本当に魂は綺麗だし、生前問題を起こすどころか、反抗期すら無かった良い子なのはわかってるのよ。だけどアンタの幼女とか童女に対する異常な愛情が何なのかがわからないわ。それはアレなの?ちょっと行き過ぎた母性なの?それとも性癖なの?転生させた先で不祥事でも起こされたら困るのよね」
「いや、ちっちゃい子が可愛くて尊すぎるだけで別にロリコンとかじゃないですから!性癖なんて以ての外です!ちっちゃい子は天使です!守るべき世界の至宝なんです!」
「傍から見たらただの変態だって自覚ある?」
……私が小さい子が天使だと気づいたのは中学生の頃だった。一人っ子だった私は、友達の家でその子の妹に「おねえちゃん」と呼ばれた瞬間に悟ったの。妹、もとい全ての幼い女の子はこの世に降り立った天使だと。男の子?関わりが無かったからどうでもいい。
「生まれ変わったら妹が欲しい人生でした」
「生まれ変わっても妹は出来ないわよ」
「なんて悲劇!」