では、改めて。
そこで、俺が見たものは。
とてつもなく、美しい少年だった。
その少年は猫の耳と尻尾をはやし、悪魔の羽をもっていた。見た目は、可愛らしく、そして美しいのだ。それなのに、俺は腰を抜かすほどの恐怖に震えていた。
恐ろしいのは、見た目なのではない。その纏うオーラが禍々しいのだ。俺は、情けないことに、少年の纏うオーラに腰を抜かしていた。もしも今、俺が少しでも視界に入ったら、きっと殺されるだろう、ということが嫌でもわかる。俺のことを茂みに引き込んだ大男でさえ、ひっそりと息を潜めている。
そして、少年が通りすぎるのを待った。
「……っふぅーーーーー……。」
もう大丈夫そうだと思って気が抜ける。後ろにいる獣人大男も、ほっとした様子だ。
「ぁ、あの……?」
俺は後ろを振り向きながら声を掛ける。
そして驚く。
「うわっあ、あぁ……。」
手が人間のそれではなかったので人でないことは承知していたが、まさかこんなにも艶やかで、 純黒の毛並みを持った犬?だとは……。さっきのオーラに当てられた俺は、助けられたこともあって、恐怖は感じなかった。
その時、大男が口を開く。
「……一つ、言っておくが。俺は犬ではなく、狼だからな?いいか、狼だ。」
「はい、判りました。」
……やっぱ、こわいかも……。
「それであの、ここは……?」
とりあえず、自分が今いるこの場所は何処なのか。これがわからなければ。何故ならば、自分の中の世界の常識が明らかに覆されているからだ。
大男は答える。
「は?自分が今いる場所が何処か判らなくてここにいるのか?……はぁ、ダメだな。まぁいい。いいか?ここはな、俗に言う魔界だ。魔界っつっても幾つかあるが、ここはその中でも最も大きく、且つ全ての魔王の上に君臨するルシファー様……今で言うサターン様が直轄で治めているところだ。ここはその魔界の東の端の方だ。ちなみに、さっきの少年は、サターン様の息子さんだ。」
呆れた様子を見せつつも、至極丁寧に教えてくれた。
「丁寧にどうもありがとうございます。」
「あぁ。」
そして何となく沈黙。取りあえず茂みからは出たものの、これからどうすれば善いのだろう。大男はどうするのだろう。えっと……。
「あの、貴方はこれから何処へ?」
俺が大男にそう問う。
「あ?俺か?俺は……そうだな、何というか……言いづらいな。やばいかも知れないから一回しか言わない。俺は……──────。」
…………
今年のハロウィンの時期に更新します!